●19歳で人工肛門を経験

――石井さんは血便を放置したことで病気の発見が遅れてしまいましたが、ちょっとした異常でも病院に行ったほうがよいですか。
そうですね。自己診断は危険なので、一度診断を受けたほうがよいと思います。
――潰瘍性大腸炎以外でも、便の悩みを抱えている人に伝えたいことはありますか。
私が外来診療しているクリニックで多い相談は、過敏性腸症候群の方です。症状は便が近くなる、漏れてしまうなど。ただ、勇気を出して病院に行っても、「体質なのでは?」と取り合ってもらえないこともあると聞きます。
もしそうなったら、セカンドオピニオンに行くのが良いと思います。過敏性腸症候群の専門家もたくさんいますし、もちろん僕のクリニックに来てもらうのも歓迎です。いろいろな薬も出ていますし、止められない便はありませんので、安心して相談に行ってみてください。
――石井さんは19歳で大腸を全摘出し、人工肛門を経験されています。どのような気持ちだったのでしょう。 大腸の摘出手術の前は、体に大きな変化があるのか、人工肛門になったらどうなるのか、不安でした。けれどいざ蓋を開けると、体の辛さが取れて楽になりましたね。食事制限も無くなって何でも食べられるし、人工肛門にもすぐに慣れて、前向きになれました。
病気を抱えて辛い思いをして生きるよりは、思い切って人工肛門にするのもひとつの手段かもしれません。また、約一年後に、人工肛門を閉じる手術を受けることができました。今は医療技術が進んで、できることが本当に広がっていることを、ぜひ知っていただければと思います。
●みんなを幸せにする「うんもれエピソード」
――日本うんこ学会のWEBサイトでは「うんもれエピソード」という、便を漏らしてしまった体験を投稿するコーナーがあり、読みながらくすっと笑ってしまいました。
誰にも言えない経験ですが、開示してみると、共感の声がめちゃくちゃあったりします。あと、飲み会で話すと絶対に受けます。面白いし、みんなを幸せにする話なのに、隠さないといけないのは変かなと。読む人を豊かにさせるコンテンツになったかと思います。
このエピソード集は、『タイムマシンで戻りたい』という本になったのですが、一般の方々から募ったところ、あっという間に集まったのも驚きでした。
――日本うんこ学会の理念のひとつに、『「先生うんこに行ってきます!」が自然と言える社会を目指す』とあります。実現しつつあると感じますか。
昔はうんこに行ったことがばれると、イジメられてしまうこともありました。けれど最近は、堂々と言える子どもが増えているようです。『うんこドリル』がベストセラーになるなど、社会変化もあったおかげで、うんこに寛容な社会になっていることを実感しています。とはいえ、まだ100%ではないので、すべての子どもが「先生うんこに行ってきます」と言えるようになればと思いますね。
【石井洋介さんプロフィール】
高知大学医学部卒業。中学3年生で難病の潰瘍性大腸炎になり、19歳で大腸を全摘出したことをきっかけに医師を目指す。おうちの診療所中野院長、株式会社omniheal代表取締役、日本うんこ学会会長。

