
やまもと工藝が独自に開発した『絹で洗える単衣きもの』は、はっ水加工に頼らず、絹糸の製造段階から研究を重ねた唯一無二の技術によって生まれた、絹本来の自然な美しさと風合いを保ちながら自宅での水洗いを可能にしたもの。展示会では、そんな『絹で洗える単衣きもの』の全貌とその誕生秘話を初公開する。

■本展示会の見どころをチェック!
ここでは、『絹DE洗える単衣きもの』誕生ものがたり展で特にチェックしてほしい内容を紹介する。
■1.「洗える絹」誕生秘話&和装の新たな可能性
「絹はなぜ洗えないのか」という根本的な問いから始まり、はっ水加工ではない糸のより方、広幅の生地開発、そして洋服から着想を得た開発の経緯まで、その試行錯誤の軌跡をパネル形式で解説。開発過程で生まれた貴重なサンプル品や誕生にまつわる解説パネルも展示し、洗う前と洗ったあとの風合いの変化を実際に見て触れて、その驚くべき変化を体感することができる。この画期的な生地はきものだけでなく、肌に直接触れる襦袢(じゅばん)として仕立てることも可能で、よりいっそう快適で清潔な和装ライフを提案してくれる。

■2.「麻よりも涼しい絹」という新提案
夏といえば麻のきものというイメージが強いが、やまもと工藝では麻は繊維の構造上、保温性が高く、透け感がないと熱がこもりがちだと考えているそうだ。一方、絹は吸放湿性に優れ、肌にまとわりつかない軽やかさがあるという。展示では、絹が持つ本来の涼やかさと着心地のよさに着目し、暑い夏でも快適に美しく着られる「新しい夏のきもの」としての『絹で洗える単衣きもの』も、来シーズンに向けて提案してくれる。

■3. ケミカルフリーへのこだわりと絹本来の美しさ
市場に流通する「洗える絹」の多くは、はっ水加工処理や、化学繊維を使用することによって水への耐性を持たせているそうだが、やまもと工藝の『絹DE洗える夏きもの』は、それらに頼ることなく、絹糸の製造段階から工夫を凝らした独自の布地となっている。これにより、絹本来のしなやかで柔らかな風合いを損なうことなく、自宅での手入れが可能に。自然の恵みを最大限に活かした、本物志向のきものとなっている。

■4. 代表・山本宗司さんによる「洗える正絹の誕生秘話トークイベント」
初日のレセプション(9月21日)では、和裁師であり、やまもと工藝代表でもある山本宗司さんによる「誕生秘話トークイベント」が開催された。

■5. 山本宗司さんによる「山本流採寸の会」
美しい着姿は採寸と寸法出しの技術にかかっているという。まるできものが吸い付くようだと評判のやまもと工藝の仕立て技術は、独自に考え抜かれてきた寸法出し技術によるもの。通り一辺倒の採寸と寸法出しとは異なる「マイ寸法」を出してもらうことができる(要予約)。

そのほか、会期中はきものと一緒にたのしめる「酒論(さろん)松むろ」セレクトの器や自然派ワインの紹介もあるという。
本展示会について、担当者に話を聞いた。
――本展示会のターゲットは?
工芸品に初めて触れる層が20代に多く、その後の購入意欲も高いこと、また日本の工芸品が海外市場で高い評価を受け、需要が増加していることから、若年層および海外層は重要な新規ターゲットとなります。若年層には、伝統技術に現代的デザインやポップカルチャーを融合させた作品が支持される傾向があることを踏まえ、「絹で洗えるきもの」のモダンでシンプルなデザインをアピールしたいです。また、視覚的魅力を重視し、きものの新しい楽しみ方も提案します。漫画『銀太郎さんお頼み申す』の読者層(20代~60代)がきものや日本文化に強い関心を示すことから、こうした「和文化コンテンツ」を起点としたアプローチも有効であると考えており、きものや日本の伝統文化への入口としてやまもと工藝の存在を提示します。
――本展示会の見どころは?
絹で洗えるきものは、単なる機能性だけでなく、現代のライフスタイルに寄り添い、手入れの負担を軽減することで、より多くの人が日常的にきものを楽しめるようにするという「実用性」と「サステナビリティ」の物語を訴求します。これは、長く使える良質な製品への若年層の関心にも合致するメッセージだと考えています。自宅で手軽に洗濯できることできものへの心理的ハードルを下げ、日常着としての新たな価値についても提案します。そして、「伝統を重んじながらも、現代の生活に寄り添い、進化し続けるやまもと工藝」という一貫したブランドメッセージを確立することで、多様な層に響く魅力的なブランドイメージを構築できると思っております。
――アイデアはどのようにして生まれましたか?
開発アイデアは、絹地を使った和服風の洋服を作ることから始まりました。洋服であれば、洗えることが重要なポイントとなります。さらに涼しく通気性のよい布を探していましたが、よいものがなかったことと、「麻は涼しい」や「絹は洗えない」という定説は、布や糸を理解している者からすると、知識不足が招いている誤解であると思っていました。
正しい知識を持つことで、伝統や技術は引き継がれていきます。また、それらは常に新しくアップデートされていかなければならないものです。やまもと工藝は、常に世の中の定説を検証し直し、よりよいものを、現代の生活に合わせて提案したいと思っています。そのような哲学のもとに、化学薬品に頼らず「絹でも洗うことができる」という新しい常識を技術の革新によって生み出しました。技術的なことを言うと、絹は糸に撚りがかかっているから縮みます。その撚りを工夫することで縮みを防ぎ、洗えることを可能にしました。
そして、この技術を可能にし、さらに幅広で織る技術者が見つかったことで、より効率的に生地を生成し、価格を下げることにも成功しました。いくつもの出会いによって作られた「絹で洗えるきもの」は、日本の伝統文化と技術を継承しながらも、進化を続ける和装文化の新しい常識となっていきます。
――ユーザーへのメッセージは?
代表の山本宗司は、東村アキコさんの漫画『銀太郎さんお頼み申す』に登場する和裁師のモデルとなっています。豊富な知識と斬新なアイデアにより、多くのきもののトレンドも作り上げてきました。例えば、久米島紬のデザインを担当した際に、これまで存在しなかった大柄の意匠を用いることで、あちこちで同じような大柄のデザインが生まれるようになりました。「絹で洗えるきもの」も、そのようなきものの業界のトレンドになることを願っています。
<『絹DE洗える単衣きもの』誕生ものがたり展 開催概要>
期間: 2025年9月21日(日)~24日(水)
場所: 代官山ヒルサイドテラス/E棟(東京都渋谷区猿楽町29-8)
入場料: 無料
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