マンガの海賊版サイト問題をめぐり、大手出版社4社が、米国のCDNサービス大手「クラウドフレア」に対して合計約5億円の損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁は11月19日、クラウドフレアの著作権侵害幇助を認め、同社に総額約5億円の賠償を命じる判決を言い渡した(高橋彩裁判長)。
訴えていたのはKADOKAWA、講談社、集英社、小学館。訴状などによると、クラウドフレアは、人気マンガ「ワンピース」や「進撃の巨人」などを無断で配信していた海賊版サイトの運営者に対し、自社のサービスを提供していた。原告4社が著作権侵害であると通知したにもかかわらず、対応を行わなかったため、損害が発生したとして、2022年1月に提訴していた。
弁護団によると、クラウドフレアに賠償命令が下ったのは世界でほぼ初めてのケースという。
●月間3億アクセスあった海賊版サイト
訴状などによると、対象となったのは2つの大手海賊版サイト(現在は閉鎖)。最盛期の2022年1月には、2サイト合計で月間3億アクセスを超え、4000作品・12万話を超える漫画を無断配信していた。
クラウドフレアはこれらの海賊版サイトにCDNサービスを提供、海賊版サイトの運営者は海外で身元を秘匿しながら、膨大なマンガを配信することが可能となっていた。
原告4社は2020年4月から2021年11月にかけて、クラウドフレアに対して海賊版サイトが著作権侵害をおこなっていることを通知していた。
訴訟では、原告4社はクラウドフレアがCDNサービスを海賊版サイトに提供し続けた行為が、出版権の侵害や侵害の幇助行為にあたると主張。各社の代表的なマンガ、1作品について、賠償を請求していた。

●「海賊版サイトの抑止力に」
判決後、報道陣の取材に対し、弁護団の福井健策弁護士は「出版社や漫画家の願いは賠償ではなく、海賊版サイトであると通知したら、配信を止めるということ。判決は、海賊版サイトの抑止力として期待できる」とその意義を指摘した。
また、集英社の担当者は「クラウドフレアと協力し、多くの海賊版サイトを止めることができるのではないかと期待している」と話している。

