韓国の人気グループ「BTS」のJINさんにキスしたとして、日本人の50代女性が強制わいせつの罪で韓国の裁判所に在宅起訴されたと報じられました。
報道(TBS NEWS DIG、11月18日など)によると、女性は2024年6月に開かれたJINさんとファンがハグをするイベントで、JINさんの頬に無理やりキスをしたなどとして、今年5月に書類送検されていました。女性は「悔しい。これが犯罪になるとは思わなかった」などと供述しているそうです。
この女性はいったいどんな罪に問われるのでしょうか。また、「犯罪になるとは思わなかった」ことが犯罪の成否に影響するでしょうか。
●韓国の刑法で処罰される
まず、韓国の刑法では「この法律は、大韓民国領域内において罪を犯した内国人及び外国人に適用する」(韓国刑法2条)とされているため、今回のケースは韓国の刑法による処罰対象となります。
次に、韓国の「強制わいせつ罪」の規定では、暴行または脅迫により、人に対しわいせつな行為をした者は、10年以下の懲役または1500万ウォン(約150万円)以下の罰金とされているようです(韓国の刑法298条)。
では、「犯罪になるとは思わなかった」という点についてはどうでしょうか。
日本の刑法であれば、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる」(刑法38条3項)とされています。
したがって、「犯罪になるとは思わなかった」という言い分は通りません。
また、ここでの「情状」は、簡単にいえば自分の行為が悪いことだと思えなかったことについてそれ相応の理由がある場合をさします。
今回のケースでは、JINさんの同意を得ず頬にキスしたことは認識できていると考えられますので、「情状」による減軽もないでしょう。
韓国の刑法では、「自己の行為が法令により罪とならないものと誤認した行為は、その誤認に正当な理由があるときに限り、罰しない」(韓国刑法16条)とされています。
今回のケースでは、やはり誤認に正当な理由があるとは考えにくいため、原則通り(韓国刑法の)強制わいせつ罪が成立すると考えられます。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

