不快感で決まる「キャンセルの現実」
これらも、倫理や道義が暴走したケースです。日本代表のビジュアルは、本当に韓国国旗に酷似していると、詳細にチェックされたのでしょうか。その結果、酷似していると言わざるを得なかったのだとしても、では韓国国旗に似ていることがどうしていけないのか、なぜ怒っているのかを慎重かつ丁寧に説明することは、非常にデリケートな問題です。
日本サッカー協会(JFA)は、11月10日にJFAオフィシャルWEBサイトに掲載したサッカー日本代表「最高の景色を2026」アンバサダーのキービジュアルを変更することといたしました。
— サッカー日本代表 🇯🇵 (@jfa_samuraiblue) November 14, 2025
JI BLUEの皆さんとの取り組みの意図や目的をより正確にお伝えしていくために検討を重ねた結果です。… pic.twitter.com/EzW1qJXVVG
それは“日本代表なのになんで韓国みたいなんだ”という主張だけでは通りません。確かに気持ちはよくわかります。けれども、この種の問題であればあるほど、冷静に理詰めで対処しなければならないのです。
しかしながら、サッカー協会も批判した人たちも、この点に真剣に向き合うことはしませんでした。ある意味、暗黙のディスコミュニケーションが事態の早期解決につながったという皮肉なのです。
そしてaespaも日本代表のキービジュアルも、確証のない不快感が決定事項の変更を左右し得るという構造が同じなのです。
aespaのきのこ雲ランプ騒動を受け、いまのところNHKはリアクションを見せていません。おそらく、このまま出場という流れになると思います。そこにはaespaでなければならないという積極的な理由のかわりに、紅白キャンセルの署名運動をしている人たちの熱は長続きしないだろうという消極的な確信が根拠にあるのではないでしょうか。
ニンニンのきのこ雲ランプ騒動は、延焼が激しく大きいほどに、人知れず消化してしまう、現代の摩訶不思議な炎上騒動の真実を映し出しているのです。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

