子どもが乱視になったらすぐに眼鏡が必要?乱視の仕組みについて眼科医倉員先生にお伺いしました

子どもが乱視になったらすぐに眼鏡が必要?乱視の仕組みについて眼科医倉員先生にお伺いしました

子どもが乱視と言われた!どういう対応をしたらいい?すぐに眼鏡や治療が必要になる?そんな疑問について、医療法人創光会理事長の倉員敏明先生にお伺いしました。

子どもの乱視:知っておきたい仕組みと向き合い方

はじめに「お子さんに乱視があります」と眼科で言われると、多くのお母さんやお父さんは不安になります。「乱視って病気?」「勉強やスポーツに障害はないの?」と心配になるのは当然です。

けれども実は、程度の差はあるものの、乱視は誰にでもあるものです。完全に乱視がない人のほうが珍しく、軽い乱視なら日常生活にまったく影響はありません。
さらに、乱視には思いがけない利点もあります。少しの乱視があると焦点深度(ピントが合う範囲)が広がり、物が見やすくなることがあるのです。大人になって老眼が始まると、多くの人が近くを見るのに不便を感じますが、軽い乱視を持っている人は近くが比較的見やすい傾向があります。

つまり「乱視=すべて悪いもの」ではなく、むしろほとんどの乱視は心配のいらない正常の範囲なのです。
では、どんな乱視が注意すべきもので、どんな乱視は心配しなくてよいのか。ここからは乱視の仕組みと原因、そして治療について順にご紹介します。

乱視の仕組み

光は角膜と水晶体で屈折し、網膜の一点に集まることでクリアな像を結びます。
角膜や水晶体の形にゆがみがあると光が一点に集まらず、にじんだり二重に見えたりします。これが乱視です。

正常な角膜:サッカーボールのようにどの方向も均一なカーブ。光は一点に集まり、はっきり見えます。
正乱視(regular astigmatism):角膜がラグビーボールのように縦と横でカーブが異なる場合。光は縦と横に二本の焦点線を結びます。規則的な歪みなので、眼鏡やコンタクトで矯正しやすいタイプです。
不正乱視(irregular astigmatism):角膜の表面がデコボコしたり傷跡が残ったりして光が不規則に散乱する場合。これは眼鏡では矯正しにくく、ハードコンタクトレンズや特殊治療が必要になります。

生まれつきの乱視(先天性)

角膜の形の偏り:体質的に角膜が楕円形で軽度の正乱視を持って生まれる子は多くいます。ほと
んどは問題になりません。
先天性角膜混濁や瘢痕:角膜に生まれつき濁りや傷があると光が乱れ、不正乱視になります。
小眼球などの発育異常:眼全体の発育に伴って角膜形状が不整になり、乱視を伴うこともあります。

成長してからの乱視(後天性)

円錐角膜
思春期に発症しやすい角膜疾患です。角膜中央が徐々に薄くなり、円すい形に突出してきます。初期は正乱視に見えますが、進行すると不正乱視に変わり、眼鏡では矯正が難しくなります。視力が出にくい、眼鏡を作り直しても合わない、といった場合は早期発見が重要です。進行を抑える「角膜クロスリンキング」という治療が近年可能になり、重度では角膜移植が検討されます。
角膜外傷や炎症後の瘢痕
サッカーボールが目に当たる、角膜炎で潰瘍ができるなどのあとに傷跡が残ると、その部分が歪み、不正乱視を起こします。
内反症(逆さまつげ)
乳幼児に多く、まつ毛が角膜に当たり続けることで傷ができ、慢性的な不正乱視の原因になります。放置すると視力発達に影響するため、必要に応じて外科的治療が行われます。
アトピー性皮膚炎や慢性アレルギー性結膜炎
かゆみで目をこする習慣が続くと、角膜に微細な傷や形の歪みが起こります。
春季カタル
アトピー型アレルギー性結膜炎の重症型で、特に小児から思春期の男子に多いのが特徴です。強いかゆみや炎症で角膜に潰瘍や濁りを作りやすく、不正乱視を引き起こします。進行例では角膜移植が必要になることもあり、早期治療と予防が欠かせません。

どんな乱視が問題になるのか
ここで大切なのは「乱視があるかどうか」ではなく「どんな乱視なのか」です。

問題にならない乱視

軽度で日常生活に支障がない乱視です。これは多くの人が持っており、眼科で「乱視があります」と言われても心配のいらないケースが大半です。

問題になる乱視

強い乱視や左右差が大きい乱視
円錐角膜、春季カタル、外傷・炎症後瘢痕などで不正乱視を伴う場合
弱視(視力が発達しない状態)の原因となる場合このような場合には、早期の対応が必要です。

乱視は眼鏡が必ず必要?
「乱視があるとすぐに眼鏡が必要なのですか?」という質問はとても多いものです。

見え方に支障がなければ眼鏡は不要です。ほとんどの人がこのタイプです。
近視や遠視と合併する場合
乱視そのものは軽度でも、近視や遠視と組み合わさると像がにじみ、見づらさが強くなります。その場合は近視・遠視に加えて乱視も矯正することで、よりクリアな視界が得られます。
成長期と弱視予防
子どもは視力が発達段階にあるため、強い乱視や左右差が大きい乱視を放置すると弱視の原因になります。この場合は必ず眼鏡矯正が必要です。

「目を細めるクセ」に注意
子どもは無意識に「目を細める」ことで乱視の影響を一時的にごまかし、像をはっきりさせようとします。これはカメラの絞りを絞るのと同じで、焦点深度を深くして見やすくしているのです。
一見便利な方法に思えますが、この習慣が続くと目の疲れや頭痛の原因になる、集中力が途切れやすい、近視が進みやすくなる、といった問題につながります。
「目を細めて見ている」「顔を傾けて物を見る」といった様子があれば、眼科でのチェックをおすすめします。

不正乱視の治療と対応

不正乱視は眼鏡では矯正しにくいため、以下の方法がとられます。
ハードコンタクトレンズ(RGP):涙の層で角膜の凹凸を補い、きれいな屈折面を作ることで視力を改善します。
特殊コンタクトレンズ:円錐角膜用レンズ、角膜を覆う大型のスケラルレンズなど、角膜の状態に合わせて使用します。
手術的治療:角膜クロスリンキング(円錐角膜の進行抑制)、角膜移植(重症例)、内反症の矯正手術など。
基礎疾患の治療:春季カタルやアトピーでは、アレルギーコントロールが視力保護の第一歩です。

まとめ

乱視は決して珍しいものではなく、ほとんどの人に程度の差はあります。
多くの子どもに見られる軽い乱視は心配のいらないものであり、場合によっては焦点や深度を広げるという利点さえあります。
本当に注意が必要なのは、強い乱視や左右差が大きい場合、円錐角膜や春季カタルなどの病気で不正乱視が進行する場合、成長期に弱視につながる場合です。
「乱視があります」と言われても、それがただちに病気を意味するわけではありません。大切なのは「どんな乱視なのか」を知り、必要なときにきちんと矯正・治療することです。
お子さんの未来の視力を守るために、過度に不安にならず、正しい理解を持っていただければと思います。

※文章の校正時にAIを使用しています。

くらかず眼科

執筆者

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倉員敏明

倉員敏明

さいたま市見沼区で白内障・緑内障・網膜硝子体等の日帰り手術を中心とした眼科クリニックを運営。

当院は「患者さま一人ひとりに合った目の治療を提供し、地域に根差した医院となる」を理念に、さいたま市の地域の皆様の目の健康に貢献したいと考えています。
私の専門は網膜硝子体ですが、クリニックでは様々な疾患のエキスパート医師を招聘し、質の高い最新の医療を提供し、患者さまに満足いただけるよう心がけています。
全員に「来て良かった」と思ってもらえるようなクリニックでありたいと日々思っています。目に関する事なら何でもご相談ください。必ず力になります。

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