自宅で最期まで暮らすために──緩和ケアの役割
17年前、僕は外科医をやめて、がん患者専門の訪問診療を始めました。患者さんが最期まで自宅で暮らせるようなケアをし、その一つの手段として緩和ケアを施しています。
「緩和ケア」という言葉を耳にすることは多いと思いますが、重い病を抱えている患者さんやその家族の、心身のさまざまな苦痛を和らげるための医療です。
僕はこれまで2000人以上の患者さんを、自宅で看取ってきました。亡くなる直前までご自宅で、家族や友人と笑い、好きなものを食べ、「ありがとう」と笑顔で去っていった方たちがたくさんいます。大好きなお酒を楽しんだり、タバコを嗜んだり、何よりも好きな競艇に出かけた人もいました。亡くなる直前までトイレに歩いて行くどころか、大好きなゴルフを楽しんだという方もいました。
本来死とは、苦しいものではありません。考え方を変えれば、こうした幸せな亡くなり方ができるのです。では、何をどう考えればいいのか。前向きなお話を、これからさせていただこうと思います。
僕は、病院での治療を否定するわけではありません。
ただ、治療をやめて、家で人生を終えるという選択肢も知ってほしい。
だから僕は、「棺桶まで歩こう!」と何度でも呼びかけたいと思います。

