「何年かかったんだろう」「ちょっとしんみり」 大分・国東半島で出会った〝風化しすぎてる狛犬〟に11万人驚がく

「風化によってなんかシャープにかっこよく概念になりつつある狛犬です」

そんな呟きと共に投稿された写真が、X上で注目を集めている。

これは......!?(画像は幣束@goshuinchouさんの投稿より)

写っているのは、石の台座の上に乗ったウニョウニョとした形の物体。「昆布(海中のすがた)の石像です」と言われたらまあまあ納得しそうなシルエットである。

しかし、呟きの通りこれは〝風化した狛犬〟。

元はどんな姿だったのか想像もつかないほど、削れてしまっているのだ。

あまりにミステリアスな狛犬に、X上では11万件以上のいいね(19日夕時点)のほか、こんな声が寄せられている。

「ジャコメッティの彫刻みたいになってきてますね」
「ここまで風化するのに何年かかったんだろう」
「霊力とか神聖な力が宿っていそう」
「もう魂が剥き出しの芯だけになっても、神様を御守りしたいと残り続けている......ような......ちょっとしんみり」

Jタウンネット記者は11月6日、まずは発見者の幣束さんに話を聞いた。

消えゆきながらも、健気に――

幣束さんが風化した狛犬を見つけたのは、大分県国東市にある櫛来社(岩倉社)でのことだ。

この神社は、毎年10月14日に行われる起源や由来が不明な火祭り「ケベス祭」(国選択無形民俗文化財)の舞台としても知られている。

ケベス祭り(画像提供:大分県観光情報公式サイト内「おおいた風景写真集」)

その場所で〝風化した狛犬〟を目撃したときのことを、幣束さんはこう振り返る。

「風化している石仏などはよく見ますが、ここまでのものは見たことが無かったので驚きました。風化してやがては消えゆきながらも健気に神域を守ってる姿が心に響きました」(幣束さん)

投稿によると、向かいの狛犬も〝概念化〟しつつあったらしい。

向かいの狛犬(画像は幣束@goshuinchouさんの投稿より)

そしてその手前には、新しい狛犬が設置されていたようだ。

狛犬たちは一体、どうしてこんな姿に? 幣束さんの投稿には「塩かけ地蔵」のように塩を擦り込む風習があるのではないか、と考察するユーザーもいたが......。

国東半島は石像芸術の宝庫! ほかにもユニーク狛犬が

18日、記者の取材に応じた国東市教育委員会・文化財課職員によると、この狛犬たちは、櫛来社境内本殿に向かって左横に位置する若宮八幡社のもの。全部で4体の狛犬が設置されており、設置年代については「史資料等の記録が無いため不明」だという。

うち2体の風化がかなり進んでいるが、彼らはもともとセットだったわけではないらしい。

「同じ方角を向いており、かつ石材や風化具合に差異が見られるため、1対の狛犬として作られたものではないと思われます」(同職員)
もともと対ではなかった(画像は幣束@goshuinchouさんの投稿より)

そして、風化の理由については、次のように説明した。

「当該周辺地域において、塩を意図的にすり込むような風習があるということは、当課では把握しておりません。国見町出身の文化財調査委員の方にも確認しましたが、そのような風習があると聞いたことは無いとのことでした。
海が近いため、浜風による浸食もあるかとは思いますが、もともと石質が柔らかい(安山岩など加工しやすい石質がこのまれます)ために風化等による劣化が激しくなっているのではないかと思われます」(国東市教育委員会・文化財課職員)

櫛来社があるのは、瀬戸内海に突き出す国東半島の北部。すぐそこに海がある。

そんな環境が、狛犬たちの姿を変化させたようだ。

今回、狛犬たちにスポットライトが当たったことについて、同職員は

「文化財的な視点とはまた異なるところで注目されているように思いました。
当該狛犬だけでなく、国東半島には多くの石造美術が点在しています。これをきっかけとして、ぜひ一度国東半島に来ていただき、櫛来社をはじめとした神社・寺院等にお参りしていただければ幸いです」

とコメントしている。

国東市公式観光サイトを覗いてみると、確かにユニークな石像がたくさん。

特に山神社の「すきっ歯と舌が丸見えの阿形」や「まるっとした造形の吽形」(どちらも足元に子狛がじゃれついている)や、伊美別宮社の「オシャレなボブカットが印象的な阿形」「ちょっといかつい表情の吽形」などは、見逃せない愛らしさ。

狛犬好き・石像好きの皆さんは、要チェックだ。

配信元: Jタウンネット