学歴詐称疑惑を指摘され、市議会の不信任決議により失職した静岡県伊東市の田久保真紀前市長が、失職に伴う市長選への出馬を正式に表明した。
報道によると、田久保氏は記者会見で「もう一度任せていただけるのであれば、チャレンジしたい」と述べ、再び市長になることを目指すという。
SNSでは「また出るのね」というネガティブな反応が少なくないが、応援する声もあがっている。
田久保氏は、市の広報誌で「東洋大学卒業」と紹介していたが、実際には除籍だったことが発覚。これを重く見た市議会は不信任決議を2度可決し、10月31日に失職していた。
さらに、学歴詐称疑惑を調査していた市議会の百条委員会などが、公職選挙法違反や地方自治法違反の疑いなどで刑事告発しており、現在も捜査が続いているとみられる。
では、もし田久保氏が起訴されたり、出直し選挙で再選した後に有罪が確定した場合、市長としての地位はどうなるのか。清水勇希弁護士に聞いた。
●有罪が確定すると一定期間は立候補できず
──学歴詐称が疑われている田久保氏ですが、選挙に立候補できなくなる場合や条件はあるのでしょうか。
結論として、有罪が確定すれば、一定期間、立候補できなくなります。
公職選挙法252条は、買収や煽動、虚偽事項の公表など、選挙犯罪で有罪となった場合、被選挙権が一定期間制限されると定めています。
田久保氏は現在、公職選挙法235条1項の「虚偽事項の公表罪」で刑事告発を受けています。同罪は、当選を得たり、他人に得させたりする目的で、候補者の経歴などについて、虚偽の事項を公にした場合に成立するものです。
この罪で起訴され、有罪となった場合、法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。有罪判決が確定すると、少なくとも判決確定から5年間(執行猶予付きの場合はその期間)選挙権・被選挙権を行使できません。つまり、この期間は立候補できなくなります。
●起訴されただけでは立候補に影響なし
──では、起訴段階や、当選後に有罪が確定した場合はどうなりますか。
法律上、起訴されただけでは、立候補が制限されることはありません。しかし、当選後に有罪が確定した場合は失職します。
地方自治法143条1項は、普通地方公共団体の長が、被選挙権を有しなくなったとき、その職を失うとしています。
虚偽事項の公表罪で起訴され、仮に市長選に当選した後に有罪が確定すれば、罰金または拘禁刑が科され、一定期間、被選挙権を有しないことになります。
そのため、田久保氏が次の市長選で当選しても、仮に虚偽事項の公表罪で有罪が確定すれば、その選挙で新たな選挙犯罪にあたる行為をしていなくても、市長の地位を失います。そして、一定期間は立候補することもできなくなります。
【取材協力弁護士】
清水 勇希(しみず・ゆうき)弁護士
弁護士登録以降、相続法務、不動産法務、刑事事件等に注力。リット法律事務所は、元裁判官の弁護士も在籍する等、民事・刑事事件問わず、多数の紛争案件の解決実績を誇る。「クライアントの未来を灯す」という理念のもと、クライアントのために、迅速な案件解決に力を入れている。
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