1人で抱え込むことをやめ、夫に詐欺被害の相談をした美穂。ようやく心の負担が減りました。そして翌日、消費生活センターへ行った帰りに、近所に住む母と出くわします。
実家で聞いた、母の意外な過去
消費生活センターから出たところを母に見られた私は、詳しく話をするために実家に一緒に向かった。父は仕事中でおらず、母にだけとりあえずネットで副業詐欺にあったことを報告する。情けない話なのでいたたまれなさを感じるが、母は静かに聞いてくれる。話し終えると、小さく言った。
「副業詐欺ね。楽して稼げるなんてうまい話は、やっぱりないわよね」
「ごもっともです」
耳が痛い。深く反省している私に、母はふっと優しい笑みを浮かべた。
「まあ、私も人のことは言えないからね。実はお母さんも昔、引っかかったことがあるのよ」
「え、お母さんも?」
「そう、その時は投資でね。預けるだけで利子が20パーセントもつきます!なんて謳い文句で、100万も損したのよ」
「ひゃ、100万!?」
私よりも桁違いな母の失敗に思わず大きな声をあげる。母は苦笑した。
「預けるだけで20パーセント…そんなうまい話ないわよねぇ」
「それ、お父さんは何て?」
「もちろん怒られたわよ。でも、私が育児する中で稼ぎたかった気持ちも汲んで許してくれたの。感謝してもしきれないわね」
育児中の主婦は詐欺に狙われやすい。でも…
似たような道を歩くとは、さすが親子だ。そして母は、おもちゃで遊んでいる2歳の孫娘に視線を送った。
「この物価高ですものね。あなたも育児中、少しでも稼ぎたくて動いたんでしょう」
「うん…」
「不安を感じて家族を助けたいと思った気持ちは、間違いじゃない。ダメだったのは、詐欺を見抜く力をきちんとつけていなかったこと。そしてそれは、これから学んでいけばいいのよ」
「お母さん…」
「…って、私も失敗したから言えるんだけどね」
ふと、消費生活センターの職員が言っていた「主婦は狙われやすい」という言葉がよみがえる。主婦が狙われやすいのは、世間と隔離されやすく、育児の合間でしか動けないので、詐欺相手にはうってつけだからなのかもしれない。
そして家族を助けたい、負担をかけたくないという意志があるからこそ…相談せずに泣き寝入りをしてしまう。だから、副業詐欺が多いのだ。母は穏やかに言う。
「今回のこと、教えてくれてよかった。あなたが詐欺被害の話をすることで、私も改めて引っかからないようにしなくちゃって思えたわ」
「そうなんだ」
「ええ。話すことによって、周囲への注意喚起にもなるのよ」
「…そっか」
その言葉に救われたような気がした。

