夢のために集めた「クラファン資金」のゆくえ
「世界一の心臓外科医になるため」その熱意で資金を集めた一人の女性医師が、今、美容整形外科の院長に転身したことで物議を醸しています。
SNS上ではA医師の「キャリア変更そのもの」への感情的な批判が先行しがちですが、本来追及されるべきは個人の選択ではありません。本当に問われているのは、「夢の目標」が変わったとき、その実現のために集めたクラファン資金をどうすべきか、という支援者への「道義的責任」の重さです。この論争が浮き彫りにした、新しい資金調達方法に潜む倫理的な問題に迫ります。
キャリア変更は自由、問題は「クラファン資金」は返却するべきか
物議を醸しているのは、2025年11月に大手美容外科チェーンの院長に就任した30歳前後の女性医師(以下、A医師)です。
A医師は医学生時代の2018年、「アメリカの心臓血管外科センターで1年間の研修を受け、世界トップレベルの心臓外科技術を学び、日本に還元したい」という目的でクラファンを実施し、留学を実現しました。
その後、A医師は心臓血管外科ではなく他の科で就職、そして大手美容外科の院長に就任したという情報がSNSで拡散されたのです。SNSで賛否を呼ぶ元となったのは、A医師がキャリアチェンジ先として選んだ「美容整形外科」。東京美容外科の麻生泰院長が「心臓外科の過酷な労働環境を考えれば転向は当然」と擁護するように、医師個人のキャリア変更は自由であり、誰にも追及される権利はありません。
SNS上の批判は、A医師のキャリアそのものに感情的に集中しがちですが、冷静な議論は「心臓外科医」という目標達成のために集められた資金の行き先、つまり資金を返金するべきか、否かという点に集中しています。

