出所者受け入れ委託費不足、法務大臣「補正予算を要求した」 更生保護施設に広がる危機感「持ち出しも」

出所者受け入れ委託費不足、法務大臣「補正予算を要求した」 更生保護施設に広がる危機感「持ち出しも」

刑務所を出た人たちを受け入れる更生保護施設への委託費が、国の予算不足で逼迫している問題をめぐり、平口洋法務大臣は11月21日の衆院法務委員会で「補正予算をすでに要求している」と明らかにした。

現場の施設関係者らからは「再犯が増える」「つぶれる施設が出てくる」など深刻な懸念が上がっており、全国更生保護法人連盟は10月31日、財源の確保を求める緊急要望書を法務省保護局長に提出していた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●予算不足の理由、法務省「見込みより受入数が多くなった」

法務省が関係機関に出した事務連絡などによると、2024年度の委託費の当初予算は約53億9200万円だったが、2025年度の当初予算は8900万円の減額となった。

一方で、今年度は想定を上回る利用が続き「年度末に2億6000万円以上の不足額が生じる見込み」と試算。更生保護施設や自立準備ホームに対して、対象者一人当たりの委託日数を抑えるよう求めていた。

この指示に対して、現場からは「ただでさえ委託費は足りていないのに」「犯罪が増えて治安が悪化する」といった声が上がっていた。

11月21日の衆院法務委員会では、立憲民主党の藤原規眞(のりまさ)議員が「なぜ法務省が(予算不足を)予見できなかったのか」と質問した。

これに対して、吉川崇・法務省保護局長は次のように説明した。

「本年度予算の更生保護委託費は、前年度までの委託件数の推移を踏まえて計上されている。しかし、本年度の当初の見込みよりも保護を必要とする人の宿泊数等が多くなり、委託の執行額が増加した。執行額は毎年かなりの増減があり、前年はそれが伸びなかったことで、本年度は減額となった」

補正予算や予備費で補填する予定があるかについて問われた平口大臣は当初、「検討中なので明確な答えはできない」「事務方とよく相談して検討したい」と述べたが、その後、「事務方と協議すると発言したが、正しくは補正予算をすでに要求している」と訂正した。

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●「生活費が切れる」現場からの切実な声

藤原議員は質疑に先立って、刑務所を出た人たちを実際に受け入れている施設の関係者に話を聞いたという。

関係者は、食事付きの宿泊委託が15日、宿泊のみの委託が15日、合わせて30日の委託を受けた場合、次のような問題が生じると説明したという。

「住民票やスマホの取得などに1週間は要し、働き始めるのが2週間後としても、給料は翌月なので、2週間で食事が切れるとどうやって食べていけばいいのかという問題が生じます。こうなったら委託に基づかない任意保護をするしかありません。法人の持ち出しです。寮生も不安を抱えています」

こうした声は法務省にも届いているようで、吉川保護局長は「極めて積極的に、補正予算の活用を含めてさまざまな対応を検討している」と答弁した。

さらに、委託費の当初予算の推移について、2023年度が53億7300万円、2024年度が53億9300万円、2025年度が53億400万円だったと説明。2026年度(令和8年度)の概算要求では54億9800万円(前年度比2億200万円増)を計上していることを明らかにした。

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