
横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。11月16日に放送された第44回「空飛ぶ源内」は、蔦重(横浜)が思いがけない人物から協力を求められる展開に視聴者が沸いた。そんな中、蔦重の元から離れた歌麿(染谷将太)の変わりようも衝撃だった。(以下、ネタバレを含みます)
■数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く
森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く痛快エンターテイメントドラマ。
蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎の一つといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。
美人画が大評判となる喜多川歌麿役で染谷将太、蔦重の妻・てい役で橋本愛らが出演。語りを綾瀬はるかが務める。
■蔦重と決別した歌麿は他の本屋と仕事を始める
ドラマの放送回では、4月20日放送の第16回で獄死したと描かれた平賀源内(安田顕)。その源内の生存説というミステリー展開が視聴者の興味を引いた第44回だが、一方で歌麿の変貌ぶりも衝撃だった。
長く蔦重に密かな思いを寄せていた歌麿。その思いに決着をつけるように、蔦重の元を離れ、声を掛けてきた地本問屋・西村屋の2代目となった万次郎(中村莟玉)と仕事をすることに。
吉原の親父たちは蔦重との仲を取り持ってやるなどと提案したが、歌麿は「私なりに吉原への恩は返していくつもりです」と言うだけだった。
そのときの歌麿の目を伏せたままの冷ややかな表情は、心までもが冷たく凍り付いているようだった。
蔦重の元にも養父の駿河屋(高橋克実)、りつ(安達祐実)、そして地本問屋の鶴屋(風間俊介)が心配して駆けつけるが、蔦重も何も語らず、ただ頭を下げるだけ。鶴屋が「今、歌麿さんを手放すのは、ここをたたむことになりますかと」と忠告しても変わらない。蔦重は歌麿との決別のショックに加え、ていが死産した悲劇も重なっていたのだが…。
■蔦重と歌麿の仲を取り戻そうと、ていは案を出す
そんな蔦重は、“源内生存説”を追いかけるうちに、元気になっていく。そして、同じように気力を取り戻したていが、歌麿が恋心を描いたという女絵を仕上げてはどうかと提案する。
ただ、受け取ったのは下絵で色や柄などまでは描かれていない。「旦那様なら、歌さんが使いそうなお色、好む柄など手に取るようにお分かりになるのではないですか?」とてい。蔦重は「勝手に出すと嫌がりゃしませんかね?」と消極的だったが、ていは「そこは逆手にとり、見事な彫と摺で、やはり歌麿の絵は蔦重あってこそ、そう歌さんに思っていただきましょう。そうすれば、お戻りになるのではないでしょうか」と言う。
店の台所事情が苦しい今、売り出せれば助かる。しかし、ていはそれ以上に蔦重と歌麿のことを気遣っていた。
■蔦重が完成させた絵を見た歌麿…、染谷将太の演技が光る
蔦重が細部までこだわり、歌麿の恋心を描いた女絵が完成する。
そのころの歌麿の心は晴れないまま、吉原の座敷で、闇落ちしたかのような姿を見せた。歌麿は派手に遊んだ順に仕事を引き受けるとし、集まった本屋たちが騒ぐ様子を、酒を飲みながら眺めていた。そして、ふいに立ち上がると「紙花まくやつぁ、いねえのかい」と要求する。紙花とは、お金の代わりとなる和紙で、まかれたぶんだけ祝儀となる。現代でいうチップだ。
「まかないと何年後になるか分からないよ」。歌麿はさらにけしかけた。これが吉原への恩返しでもあった。
そんな歌麿に遅れてやって来た鶴屋が声を掛けた。鶴屋は、蔦重の義兄である治郎兵衛(中村蒼)が用意していた紙花をごっそりと取り、「先生がまかれたほうが、みな盛り上がりましょうに」と歌麿に渡した。座敷には花魁たちの歓声が響いたが、歌麿の表情は暗いままだ。
鶴屋は続いて「それと、こちらを」と、持ってきた風呂敷をといて絵を差し出した。それは蔦重が仕上げ、「歌撰恋之部」と名付けた歌麿の絵だ。
鶴屋が「悔しながらさすがの出来でございますよね」と評価するものであったが、歌麿の目がその絵のある場所で止まった。歌麿の印、そしてその上には蔦屋の印が押されていた。
すると歌麿は無表情で絵を破る。鶴屋が「歌麿さん?」と言うと、歌麿は「こんなものは紙クズですよ」と言って、直前にまかれていた紙花のように破った絵を空中に投げ捨てた。
鶴屋は拾い集めた絵を蔦重に渡し、「仲を取り持つつもりが怒らせてしまったようで」と申し訳なさそうに言う。蔦重は「持ってってくれただけで、ありがた山でさ」と感謝した。
印の件は、決別宣言をしたときに不満の一つとして歌麿が蔦重に言ったこと。常は絵師の印が上にくるものだが、蔦重としては“仕掛け”を押し出すときは本屋である自分の印を上に、“絵”を押し出す時は歌麿の印を上にしたと説明。しかし、それを相談せずにしていたことも歌麿の不満だった。
長い付き合いの歌麿への慢心といえるかもしれない。しかし、そのとき蔦重は「これからはお前の名を必ず上にする」とはっきりと口にした。ていに絵を完成させてはと提案されたときにちゅうちょしたのは、相談もなしに、と考えがあったとも思えるが、“印”についての口約束はなかったことにしたのか、それとも思慮があってのものか。それは次回以降に明らかになるだろうか。
SNSには「染谷将太の闇落ち演技、好き」「染谷将太、暗黒演技がうますぎなんだよな」「無感情な演技も、繊細な感情の機微を出す演技も、天下一品」と、染谷の演技への称賛も多く上がった。染谷が織田信長役を務めた2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」での名演技を思い返すファンも多く、本作でも秀逸さが光っている。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

