11月28日全国ロードショーの映画『佐藤さんと佐藤さん』主演の宮沢氷魚さんがmamagirlに初登場!『佐藤さんと佐藤さん』では、真面目な佐藤タモツ役を演じ、岸井ゆきのさん演じる活発な佐藤サチとの出会いから結婚、育児、そしてサヨナラまでの15年間を描きます。リアルすぎる夫婦のすれ違いや、大好きなはずなのに傷つけてしまう葛藤など、「夫婦とは」「家族とは」を改めて考えさせられる本作品。プライベートでは一児の父でもある宮沢さんに、本作品を通して考えたことや家族観をお聞きしました。
役柄と同じで、自分の感情を人に伝えるのが苦手な性格

ーー宮沢さんが演じた、真面目で正義感があるタモツ。ご自身と似ている部分はありますか?
宮沢:色々と溜め込んでしまう性格は結構似ていると思います。僕も素直に言葉にして伝えた方が良いことでも、自分の中でぐっと押し殺してしまうタイプです。
タモツは、夫婦間で溜め込んでしまったことが自分のキャパを越えた時に、サチにぶつけてしまいます。そんな時「あの時もああだった」と、昔の話も交えてしまう。そういった感情もすごくわかるんです。
でも、溜め込んでしまうのもタモツの優しさでもあるんですよね。周りを傷つけたくないとか、家族を優先しなきゃいけないから自分の思いは犠牲にしようとか。そういう不器用さには、すごく共感できる部分があります。
ーー言いたいことを飲み込む性格…ストレスも溜まりますよね?
宮沢:すごく溜まりますよ(笑)。なんでも言葉にできる人が羨ましいと感じます。僕もタモツも、言いたいとは思っているんです。でも適切な言葉を探している間に時が経ち、タイミングを逃してしまう…。いざ自分のタイミングで言ったとしても、相手からしたら「今さら何?」「その時言ってよ」と思われてしまいますよね。それもわかっているから、どんどん伝えるべき自分の感情を伝えなくなってしまう。
そういったことから、人と人のすれ違いが生まれてきてしまうんですよね。作中でも、何も言わないタモツに対してサチが「タモツは多分こう思っているから大丈夫」と思ってしまっている。でも、段々と人は変わるのでお互いが思っているお互いの人物像ではなくなってしまうんです。
ーー宮沢さんは穏やかなイメージですが、タモツのように怒りの感情が止まらなくなってしまうこともあるのでしょうか?
宮沢:最近はないですが、10代の学生の頃は年に1回くらい爆発してしまうことがありました。自分がいっぱいいっぱいなこともわかっていて、どんどん感情に押しつぶされて、それが全部溢れ出して止められなくなってしまう瞬間は、過去には経験があります。
タモツの怒りのシーンはその時の気持ちを応用して演じました。怒っている自分ってすごく恥ずかしいんですよね。なんかかっこ悪いし、昔の話を持ち出して喋るのも嫌だし。でも止められなくなってしまう…そんな感情を再現しています。
作中ではリアルすぎる夫婦喧嘩シーンも
ーーサチとタモツの夫婦関係にはとてもリアリティがありました。二人の関係性はどのように作られていったのでしょうか?
宮沢:ゆきのちゃん(岸井ゆきのさん)とは初共演だったのですが、撮影が始まる前に1週間くらいリハーサル期間があり、その期間で関係性を築いていきました。
最初は台本も使わず、お互いどんな人物かを知るために一緒に食事をしたりコーヒーを飲んだりして雑談をして。そこから徐々に演技の練習もしていきました。そこでは演技の答えを見つけ出すことが目的ではなく、作品を通しての温度感や世界観を制作チームで共有することが目的です。その甲斐あってか、撮影初日から全員が同じ作品に対して同じ世界観を持って臨むことができました。サチとタモツの関係性もそのような時間を経て作り上げていきました。
ーー夫婦喧嘩のシーンも多かったですよね。
宮沢:そうですね。でも映画で描かれている二人の時間はとても短くて。映っていない15年間の二人の時間の方が遥かに長いはずです。そこをどう表現するかをゆきのちゃんと天野監督とはよく話していました。監督が元々台本にはない、映画には映さないシーンも用意してくれて。それを読み合わせて「もしかしたら二人はこういう時間を過ごしていたのかもしれない」と、空白の時間を埋めていく作業もしていました。
なので夫婦喧嘩のシーンも、映画の中で描かれていない二人の時間が蓄積していったものであることを頭の片隅に入れて演じていました。そうすることで、想いをぶつける時の温度感にリアリティが増したのではないかと思います。
ーー取っ組み合って喧嘩するシーンも印象的でした。
宮沢:あのシーンはリハーサル室で事前に練習をしていました。夫婦で取っ組み合いってなかなかないし、タモツが一方的に殴るということも考えられない。じゃあきっかけはサチだろうし、それに対してタモツはどこまで押し返すのか…など、何パターンも試しましたね。
一生懸命喧嘩しているんですけど、見ている側からしたら何やってんの?って、ちょっと笑える要素も出したかったんです。だからあの喧嘩が終わった後には恥ずかしいシーンもある。そういうギャップも感じてもらえたら。

