多頭飼いをしていると、犬同士の意外な関係性や役割分担が見えてくることも。そこで、「いぬのきもち」読者の皆さんから集まった多頭飼いエピソードをご紹介。そこに隠れた“犬の本能や習性”を動物行動学者の増田宏司先生が解説します。
「母犬が娘犬のおやつを奪い去ってしまいます……」(埼玉県 N.S.さん)
「親子、姉妹の4頭が暮らすわが家。オリーブは、自分の子ども犬のおやつやおもちゃが気になるもよう。最初は『いいなぁそれ欲しいなぁ』と圧をかけてから、徐々に近づいてペロペロ。子どもの気がそれた隙に奪い取って、自分のものにしてしまいます」

【増田先生の解説】ほかの犬の所有物が魅力的に映ることは犬にもあります
最初は単に「うらやましい」という感情だったのが、繰り返すうちに「いつもこうする」といった行動パターンとして定着していったのでしょう。とくに親子のような関係性では遠慮が少ないぶん、こうしたやりとりが起こりやすいかも。
同じ犬種同士、仲良くなるかと思いきや……(静岡県 R.Y.さん)
「ずっと〝ひとりっ子〞で飼い主の愛情をひとり占めして育ったシェリーのもとに現れた生後2カ月のリアーナ。同じ犬種同士、すぐに打ち解けるかと思いきや、予想外にシェリーは冷たい反応。けれどいっしょに遊んだりおやつを分け合ううちに少しずつ心を開いていきました」

【増田先生の解説】犬は経験から関係性を築きます
「同じ犬種だから仲よくなれる」という人の感覚は、じつは犬には当てはまりません。実際、犬種による行動傾向は性格全体のごく一部にすぎないという研究結果も。それよりも、遊ぶ・食べるといった経験を重ねることで、「このコは仲間」と認識し、少しずつ距離を縮めていくのです。
