夫同士の関係性から、馬鹿にしていた主人公・ひなことその夫の年収を知った友人・アケミ。プライドを傷つけられた彼女は、後にひなこに電話をかけてきたのでした。
アケミからの電話
アケミは私の実家で会っている間、ほとんど何も話さず、うつむいていました。彼女の夫は、そんな妻の様子を気遣い、私と和也に申し訳なさそうに「もうそろそろ失礼しますね」と帰っていきました。
2人が帰った後、私の両親は「どうしたの、アケミちゃん、元気なかったけど」と心配そうに言いました。私は「ちょっと体調が悪かったみたい」とだけ伝え、それ以上は何も言いませんでした。
その後、アケミから電話がきました。
「ねえ…いろいろ初耳なんだけど?」
「ひなこ、そんな大企業に行ってたの?ひなこも高収入だったってこと?」
アケミは、泣きそうな声でそう言いました。その言葉には、今まで私に一方的にマウントを取ってきたプライドが、音を立てて崩れていく様子が感じられました。彼女の中で、同じ「妻」という立場だと思っていた私が、彼女の夫と同じくらいの年収を稼いでいたことがショックだったのでしょう。
私は、意を決して、正直に答えることにしました。
「年収でいうと800万円くらいかな。役員じゃないにしても、役職はあるし」
その言葉を聞いたアケミは、黙りこくりました。彼女の目に、涙が浮かんでいるのが電話越しでもわかりました。今まで、私に対して一方的にマウントを取ってきたアケミ。彼女は、自分の夫の年収が、私の年収と同じくらい、そして、私の夫の年収が、彼女の夫の年収を遥かに上回ることを知って、プライドがズタズタになったのでしょう。
彼女は、自分が築き上げてきた、夫の肩書きや年収という、脆い砂上の城が一瞬にして崩れ去るのを目の当たりにしたのです。
急に被害者ヅラし始めたマウント女
「そんなこと、なんで黙ってたの?私の話聞いて心の中で馬鹿にしてたんでしょ?ひどい…」
アケミは、泣きそうになりながら、私にそう尋ねました。その声は、もはや自慢の欠片もなく、ただただ哀れに聞こえました。
「だって、話す機会がなかったでしょ?アケミはいつも、私の話を聞いてくれなかったじゃない。私の話を、全部「不幸自慢」だって。
私だって、和也さんという素晴らしい夫と、やりがいのある仕事に恵まれて、幸せに暮らしてる。それを話そうとしても聞かなかったのはアケミだからね」
何も言い返せないアケミに、心の中では、少しだけ、いい気味だ、という感情が芽生えていました。もしかしたら、そんなことを思ってしまう私は、心が狭いのかもしれません。でも、今まで彼女にされてきたことを考えると、このくらいは、許されてもいいのではないか、そう思ってしまいました。
アケミは何も言わずプツッと電話を切りました。遠くから様子を見ていた和也が近づいてきます。
「これでもうアケミさんからマウントを取られることはないんじゃない?ひなこの気持ちも軽くなったでしょ」
彼の言葉は、まるで魔法のように、私の心にこびりついていた小さな棘を、すっと抜いてくれました。

