
第十三代市川團十郎が、11月22日に都内で「初春大歌舞伎」の取材会を開催。実子の市川ぼたん、市川新之助とともに、新年を飾る演目の紹介とあいさつを行った。
「初春大歌舞伎」は、年の幕開けを祝う華やぎと格式が息づく初芝居の舞台。16回目の出演を迎える市川團十郎をはじめ、華やかな出演者がそろい踏みし、伝統美と迫力の演技で、古典の名作から舞踊まで、年の初めにふさわしい演目を披露する。
■市川團十郎、時代の変化に「昨今は歌舞伎を見る人が増えてきた」
今回の演目が、現代人にはなじみにくい古典に偏っていることを聞かれた團十郎は「今までは古典というものをそしゃくして分かりやすく伝えることが私のテーマでもあったんですが、昨今は歌舞伎を見る人が増えてきた中で、今ならば歌舞伎に興味を持った方が学んでみたいと思ってくださるんじゃないかと…学んでいただくことで深みが増す、長く日本に根付いている芸術だから、それを楽しんでもらえるようなフェーズに変わってきたと感じているので、古典に決めさせていただきました」と心境を語った。
10年ぶりに演じる「熊谷陣屋」について、團十郎は「源氏物語の中で最も美しい物語だと思っているので、表現する難しさや楽しさを古典の中で散りばめていけたらいいなと思って稽古しています」と話すと、お家芸ともいわれる「児雷也豪傑譚話」が初めての挑戦だと明かす。
続けて、「本来はいろんなものに挑戦する中で必ずやっていたであろう演目なんですが、やっていなかったということで、現代風に少しアレンジを加えながらやっていきたいなと思います」と意気込みを語った。
さらに「春興鏡獅子」では親子三人での競演が実現するとのことで、自身の女方に苦手意識を持ちつつも「ぼたんと新之助には、一度は『胡蝶』という役を体験させなくてはいけないという伝統ならではの義務感がありまして、最初で最後の『胡蝶』をできればと思っています」と思いを口にした。
それを聞いたぼたんは「父や弟と同じ舞台で演じることがなかなかなかったので、大事な時だと思いますし、最初で最後の経験になるかもしれない『胡蝶』は今まで以上に弟ともたくさん練習して、すばらしい演目になるように頑張っていきたいと思います」と語ると、新之助は「『胡蝶』は最初で最後になるかもしれないし、それを家族全員でできることがすごく幸せだと思っていて、頑張らないといけないと思いました」と気を引き締めた。

■市川團十郎、自身を「イキっていた」と回顧
子どもたちの反応を聞いて「二人のわが子を自身の10代と比べてどう感じているか?」という質問が飛ぶと、團十郎は「私はイキっていてちょっと尖っていたので、私よりしっかりしていると思います」とコメント。
さらに「せがれたちの世代は、時代が伴っているのか、いい意味でバランスの取れた人が多いなと。今の時代には、そういうバランス型の人間が増えている中で、こういう人たちが増えて歌舞伎を共に押し上げていく、という雰囲気を感じます。私の時代はスタンドプレイを頑張っていた時代だと思いますが、これからの人たちは輪となって歌舞伎を盛り上げていくのかもしれないなと微笑ましく見ています」と未来について語った。
そして「7歳の時の私のやらされている感のあるブイログと、新之助の瞳の奥の熱量は、見れば一目瞭然だったので、そういうところはそのまま育てていきたいなと思います」と、親目線で温かな言葉を紡いだ。
また、男性のみの伝統となっている歌舞伎。娘のぼたんが出られる年月は残り少ないと危惧される中、團十郎は「乗り越えなきゃいけない壁はただあるかなと思います。新しく彼女が時代を作るなら、親としてそれを見守る道を作りたい。世の中の流れを敏感に感じながら、なんとか彼女が出続けられる世の中であってほしいなと思います」と胸の内を明かした。
最後に、團十郎は「今まで私は父や先輩から荷物を預かる側だったんですけど、それを渡す側にどんどんなっていきます。伝統はそうやって紡いで人から人へ託していくんですけど、それが見れる時間にもなると思いますので、ぜひ歌舞伎を楽しんでいただければと思います」とメッセージを送っていた。

◆取材・文=永田正雄

