結婚の挨拶も済ませ、新居の準備まで進めていたのに、実は相手は既婚者だった──。
社会問題化している「独身偽装」。弁護士ドットコムに寄せられた相談の中には、男性が「独身証明」として提示してきた「戸籍抄本」に偽造の疑いがあるというものがありました。
では、戸籍抄本など公文書を偽造して独身を装った場合、どのような罪に問われるのでしょうか。瀧井喜博弁護士に聞きました。
●「戸籍抄本があったから信じた」という被害者たち
ある女性は、交際相手について既婚ではないか、という周囲の噂を問いただしたところ、男性が「戸籍抄本」を示して謝罪に訪れ、独身を証明したといいます。
女性はそれを信じて交際を続け、結婚生活を送るための新居や家具をそろえた後で相手が既婚だったと判明しました。
交際は数年に及び、違和感を覚えつつも戸籍抄本があるために信じてしまったそうです。
別のケースでは、男性が「離婚の証拠」として戸籍抄本を送ってきたものの、後にその戸籍抄本が偽造であることが明らかになったという相談が寄せられています。
いずれも被害者たちは「罪に問えないのでしょうか」とうったえています。
●公文書の偽造は重い罪に問われる
「戸籍抄本を偽造した場合、刑法上かなり重い罪にあたります」。そう話すのは、瀧井喜博弁護士です。
「戸籍抄本は、市区町村が発行する公文書です。交付された抄本の配偶者欄を消去し、印刷し直すなどの改ざんは、新たに文書を「偽造」したといえ、『有印公文書偽造罪』(刑法155条1項1号/1年以上10年以下の拘禁刑)にあたります。
また、改ざんした書類を独身の証明として他人に提示すれば、『偽造公文書行使等罪』(刑法158条1項)が成立する可能性があります。
第三者に改ざんを依頼した場合でも、有印公文書偽造罪の共犯や教唆犯が成立します。(刑法60条または61条)。自身で改ざんした場合と同様に処罰されます」

