狭心症の薬物療法は症状の改善と予後の改善を目的として行われます。抗血小板薬、硝酸薬、カルシウム拮抗薬など、主要な治療薬の作用機序や使用方法について詳しく説明します。それぞれの薬剤が持つ効果と注意点を理解することで、安全で効果的な治療を受けることができます。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
薬物療法による狭心症治療
狭心症の薬物療法は症状の改善と予後の改善を目的として行われます。以下では、主要な治療薬について詳しく解説します。
抗血小板薬と抗凝固薬の役割
抗血小板療法は狭心症治療の基本となる薬物療法です。アスピリンは広く用いられる抗血小板薬で、血小板のシクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害し、トロンボキサンA2の産生を抑制します。これにより血小板凝集が抑制され、血栓形成が予防されます。
アスピリンの至適用量は75-100mg/日とされており、この用量で心血管イベントの抑制効果が期待できます。副作用として消化管出血のリスクがあるため、胃潰瘍の既往がある患者さんではプロトンポンプ阻害薬の併用が推奨されます。アスピリンアレルギーや副作用により使用できない場合は、クロピドグレルが代替薬として用いられます。
急性冠症候群や冠動脈インターベンション後には、アスピリンとP2Y12阻害薬(クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルなど)の2剤併用療法(DAPT)が行われます。DAPTは血栓予防効果が高い反面、出血リスクも増加するため、患者さんの出血リスクと虚血リスクを慎重に評価して投与期間を決定する必要があります。
硝酸薬とカルシウム拮抗薬
硝酸薬は狭心症治療において長い歴史を持つ薬剤です。ニトログリセリンの舌下投与は狭心症発作時の標準的治療で、静脈拡張により前負荷を軽減し、冠動脈拡張により心筋血流を改善します。発作時の症状改善は診断的価値も有しており、ニトログリセリンにより症状が改善することは狭心症診断の一助となります。
長期間作用型硝酸薬(硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビドなど)は発作予防に用いられます。ただし、連続投与により硝酸薬耐性(tolerance)が生じるため、薬剤離脱期間(nitrate-free interval)を設けることが重要です。通常、夜間に8-12期間の離脱期間を設定します。
カルシウム拮抗薬は血管平滑筋のカルシウムチャネルを阻害し、血管拡張作用を示します。ジヒドロピリジン系(アムロジピン、ニフェジピンなど)は主に末梢血管拡張作用を有し、降圧効果が強いです。非ジヒドロピリジン系(ベラパミル、ジルチアゼム)は心拍数減少作用も有し、心筋酸素消費量を減少させます。冠攣縮性狭心症には特に有効とされています。
まとめ
狭心症は適切な診断と治療により症状の改善と予後の改善が期待できる疾患です。症状を見逃さず早期に医療機関を受診すること、危険因子の管理を継続すること、医師の指示に従って治療を続けることが重要です。胸の痛みや圧迫感などの心臓に関する症状でお困りの際は、循環器内科にご相談ください。
参考文献
日本循環器学会 – 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン
厚生労働省 – 循環器疾患の現状と対策国立循環器病研究センター – 労作性狭心症(安定狭心症)
厚生労働省 – 心疾患に関する留意事項
