■憧れの東京はキラキラしているけど、お金ばかりかかる

「金銭面は自分で何とかする」と親を説得して大学に入った美春は、奨学金と生活費を稼ぐことで精一杯。入学して知り合った桜子は都内在住で、親から入学祝いにもらったハイブランドのバッグを持つ。バイト代で流行のカフェに行ったり、新作コスメに使う。


ある日、桜子に誘われてカフェに行くと、注文したアフタヌーンティーは1人7000円した。1日のバイト代が吹っ飛ぶ価格に美香は、食べた気がしない。さらに、バイトで疲れて居眠りをしていると、「バイトより、大学生活の方が大事だよ」と、桜子に言われる。バイトをしなければ一緒にカフェに行くこともできない美香は、「ああ、この子は知らないんだ。自分より貧しい世界が身近にあることを」美香は現実に直面し、自分が何のために大学に来たのかわからなくなっていった。


「この主人公美香というキャラクターは、私自身の経験から着想を得てます」と、話すのは作者のうみのさん。「もともと私が田舎出身で上京して理想と現実のギャップに突き当たったり、お金を稼ぐことで傲慢になり、本来の目標を見失い若さという勢いで生きてきた時期がありました。それを主人公に投影させているので、ある意味彼女は『存在したかもしれないもう1人の私』なのです」と話す。さらに本作はよりリアリティを追及し「大学へ1人で見学に行き、主人公の擬似体験をしたり、港区界隈で資料集めをしました」と、取材にも力を入れる。

その後、美香は大学の準ミスコンに選ばれ、生活が一変。飲むだけで数万円が手に入る世界に足を踏み入れることになる。「作中にあるギャラ飲みの経験や港区で働いた経験はありませんでした。なので、リアルに実態を調査するために、元港区女子の方を探し何度も取材してシステムや実体験を調査しました。また、港区女子が好むブランド品や服装もリサーチして漫画に取り入れています」
少しづつ美春は、憧れていた華やかな港区女子に染まり、性格も歪んでいく。「この過渡期で美香が嫌われるキャラにならないように、第1章や第2章あたりで彼女の葛藤や苦悩する描写をしっかり描き、少しでも読者さんが共感や同情などできるよう構成しました。美春が港区女子に染まっていく第3章以降は、美春の目のハイライトの数を徐々に減らしていってます。あとは、年齢を重ねたり整形をするたびに顔の比率を微妙に変えたり、身につけるファッションやアクセサリー・ブランド品や小物もこだわって描きました!」と、漫画を構成するうえでこだわったところにも注目したい。
本作は制作に1年半を費やしたという、うみの韻花さんの渾身の作品。「主人公と感情を一体化させて魂を込めて描いた作品です。皆さまにとって、ふとまた読み返したくなるような、そんな一冊になればうれしいです」と話す。努力をしなければ見ることが出来ない豊かな生活とは?お金を手にすれば人は幸せになれるのか?キラキラして見える、東京の光と闇を描く。
取材協力:うみの韻花(@umino_otoka)
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