「隣の家の落ち葉が、我が家の庭に大量に落ちてきて困っています」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者によると、隣の家にもみじの木があり、その落ち葉が相談者の家の庭に落ちてくるそうです。人が出入りする玄関周りにも落ちてくることも不快に感じているそうで、特に砂利の上は掃除のしようがなく困っています。
最近の裁判例を踏まえながら、対処方法とその限界についてみていきます。
●損害賠償責任を認める裁判例もある
隣の家の枝や落ち葉によって迷惑を受けた人が訴訟を起こした事例はそれなりにあります。[東京地裁令和4年(2022年)7月4日、同令和3年(2021年)9月22日、同平成27年(2015年)12月17日など]
隣の家から自分の家の敷地内にはみ出している木の枝については、その切除を求めることができるという条文があるのですが(民法233条)、落ち葉については特に明文の規定がありません。
裁判例では、落ち葉が飛んでくる量や頻度が、社会通念上、普通なら我慢すべき範囲(受忍限度)を超えていると認められる場合に、不法行為(民法709条など)に基づく損害賠償請求が認められています。
たとえば、上であげた2022年の裁判例では、木の所有者に対して掃除費用相当額の損害賠償を一部認めました。この判決は、民法717条2項(土地の工作物の設置・保存の問題による責任)に基づいて、木の植え方や管理に問題があったと評価し、損害賠償責任を認めています。
今回の相談者の事例では、落ち葉が「庭全体にかなり落ちてきて」「砂利の上は掃除のしようがない」という状況が、こういった裁判例と同じように我慢できる限度を超える迷惑であり、かつ隣の家に故意や過失があったと判断されれば、不法行為責任が成立し、主に落ち葉の掃除にかかった費用や精神的な苦痛に対する慰謝料などが認められる可能性があります。
●「掃除してください」と求めるのは難しいと考えられる
汚した人が掃除すべきなのだから、隣の家に「掃除してください」という形で直接的に作業を求めたいという方もいらっしゃると思います。
結論からいえば、できなくはないかもしれませんが、このような請求はあまり推奨できません。
隣の人に「掃除」という作業を強制するには、その法的な根拠がはっきりしていなければなりませんが、民法上掃除などを命じることができるという明確な規定はありません。
そこで、どういった根拠にもとづいて、具体的にどんな作業を求めるのかをできるだけ具体的に特定する必要があると考えられます。これはかなり難しいと考えられます。
また、仮に裁判所が掃除を命じたとしても、隣の家が従わなかった場合には間接強制といって、従わない場合にお金を払わせる方法を使うことになってしまいます。これでは結局はお金で解決することになります。
裁判例もあたってみましたが、越境してきた枝を切るよう命じるものは見つかりますが、落ち葉を掃除することを命じるものは調べた限りでは見つかりませんでした。
そのようなわけで、隣の家に掃除そのものを直接求めるよりも、自分で掃除したうえでかかった費用を請求する方が法律上は現実的だといえます。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
(参考文献)
・新版注釈民法(7) 物権(2)(有斐閣、2007年、川島 武宜、川井 健)
・主文例からみた請求の趣旨記載例集(日本加除出版、2017年/弁護士法人佐野総合)

