
【ストーリー】
父の死をきっかけに高崎を訪れたハヤト(竹野内豊)。離婚したハヤトの母・メイコ(風吹ジュン)に思い出のサーフボードを届けてほしいという父・ユウゾウ(堺正章)の遺言と、フランス人歌手・クレア(カトリーヌ・ドヌーヴ)のコンサートチケットを見つけるが、その翌日、クレアの突然の死を知る。ハヤトは父の遺言を果たすため、幼いころに自分を捨てて家を出ていった母を探す旅に出る。
一方、死後の世界で彷徨うクレアは、ハヤトの父ユウゾウと出会い、見えない存在としてハヤトの旅を見守ることに。家族、仕事、人生といったさまざまな葛藤を抱える中、旅路でハヤトが辿り着く答えとは?そして、クレアが導く“奇跡”とは…。

■カトリーヌ・ドヌーヴ×竹野内豊の豪華共演が実現、ドヌーヴ演じる歌手が居酒屋で日本酒を呑む姿は必見!
日・仏・シンガポールの国際共同合作である本作の監督を務めたのは、斎藤工さん主演、松田聖子さん共演によるシンガポール、日本、フランスの合作映画『家族のレシピ』(2019年)を手掛けたエリック・クーさん。
エリックさんは、映画製作会社Zhao Wei Filmsの主宰者で、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの三大国際映画祭で作品が上映された初めてのシンガポール人の監督で有名な方だそう。
そんなエリック監督とタッグを組んだのは、フランスの名優カトリーヌ・ドヌーヴさん。『シェルブールの雨傘』(1964年)や『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)、近年では是枝裕和監督の『真実』(2019年)など、数々の名作に出演する大女優のドヌーヴさんが、日本を舞台にした作品に出演すると最初に知ったときはとても驚いた。
ドヌーヴさんが演じたのは、フランス人歌手のクレア。クレアは来日公演を行った直後に急死してしまい、亡霊として日本を彷徨うこととなる。生きている人間からは彼女の姿は見えないが、堺正章さん演じるユウゾウ(こちらも亡霊として彷徨っている)と出会い、共に行動するようになる。

本作は2024年に群馬県高崎市と千葉県いすみ市で撮影されており、クレアが一人で日本の居酒屋に入るシーンが登場する。クレアが日本酒を呑みながらタバコを吸っているシーンがとてもカッコよく、彼女がどんな人生を歩んできたのか想像せずにはいられなかった。
また、クレアがステージで歌うシーンも登場するが、こちらはドヌーヴさんが実際に歌唱しているそうで、とても美しくすてきな歌声を堪能できる。
父の死をきっかけに高崎を訪れたハヤトを演じたのは、主演を務めた映画『雪風 YUKIKAZE』や朝ドラ初出演作となった連続テレビ小説『あんぱん』などで話題を集めた竹野内豊さん。
ハヤトは、父の遺言を果たすため、自分が幼いころに家を出ていった母を探す旅に出るのだが、この旅に堺正章さん演じる父・ユウゾウとクレアがついていく(亡霊なのでハヤトには姿が見えない)という少しファンタジー要素のある物語になっている。ちなみに、ユウゾウとクレアが日本語とフランス語で会話しているシーンがあるが、亡霊同士だからかあまり違和感がなく、なんなら二人のやり取りにほっこりする場面も(笑)。
そして、竹野内さんといえば渋くてカッコいいイケオジ俳優だが、ユウゾウとクレアに見守られている姿や、風吹ジュンさん演じるハヤトの母・メイコと会話をするシーンでは“かわいい息子感”が出ているのがさすがだなと感じた。ほかの作品での重厚な役柄や父親役などでは見られない竹野内さんのチャーミングな魅力を堪能できる作品とも言える。


■“自分を捨てた母”と“仕事でスランプを抱える自分”に向き合っていくハヤトの姿に心動かされる
ハヤトは最初、自分を捨てた母・メイコに会いに行くのをためらう。幼いころから今まで連絡もせずに一度も会っていないならそれはそうだ。ところが、勇気を出してサーフボードを届けたことをきっかけに、ハヤトは少しずつメイコに心を開いていく。
途中で明かされるのだが、ハヤトは仕事で長年スランプを抱えている。そんなハヤトにとって、この旅は絶対に必要なものだったのだ。本作では、母・メイコの自分に対する思いと、父・ユウゾウの過去を知ることで、自分自身と少しずつ向き合い始めるハヤトの姿が丁寧に描かれている。
“中年になってから気づいたとしても決して遅くはない”と、前向きになっていくハヤトを見て自分も心を動かされた。
寒い冬にぴったりの心温まる本作を、ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。




文=奥村百恵
(C)L. Champoussin /M.I. Movies /(C)2024「SPIRIT WORLD」製作委員会
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