気になる表情ジワなどを改善するのに用いられる「ボトックス注射」は、手軽に受けられる治療として人気を集めています。しかし一方で、安全性や注意点も気になるところです。ボトックス注射とはどんな治療法なのか、「メディカルプラスクリニック新宿」の林先生に問いかけました。

監修医師:
林 和弘(メディカルプラスクリニック新宿)
産業医科大学医学部卒業。その後、北里大学医学部形成外科入局、都内美容クリニックで経験を積む。2008年、東京都渋谷区に位置する「メディカルプラスクリニック新宿(旧・メディカルプラスクリニック)」の院長に就任。医学博士。日本形成外科学会専門医・指導医、日本美容外科学会(JSAPS)専門医。日本抗加齢医学会、日本頭蓋顎顔面外科学会の各会員。
編集部
ボトックス注射とは?
林先生
ボツリヌス毒素製剤を注射することで、筋肉の動きを一時的に止める諸症状を改善する治療法のことを、一般的にボトックス注射と言います。ボツリヌス毒素が神経終末の神経筋接合部に作用して、一時的に神経筋伝達が遮断されることで、筋肉の動きが一時的にストップします。
編集部
具体的に、どのような治療に用いられるのですか?
林先生
1996年に「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」が保険適用となり、その後に「片側性顔面けいれん」「小児麻痺の尖足」などにも用いられ、2012年には「多汗症」も適用になりました。その一方で、美容領域では「額の横ジワ」「眉間の縦ジワ」「目尻の笑いジワ」「あごの梅干ジワ」などの、いわゆる表情ジワの改善が期待できます。
編集部
どのような薬剤を使用するのですか?
林先生
ボツリヌス菌とは、食中毒(例:辛子レンコン)の原因ともなる菌で、ボツリヌス菌によって産生される7種類の神経毒血清型のうちA型を単離精製したものです。7種のうち、A型ボツリヌス毒素が最も安定して強力であることから、これが用いられています。
編集部
安全なのでしょうか?
林先生
医療や美容目的で使用されるボツリヌス毒素製剤は、厳格な品質管理と安全基準のもとで製造されており、注入量、場所、単位など適切に使用される限り、安全性が高いとされています。ただ、注意したいのが「いわゆるBOTOXという名称は、アラガン社のA型ボツリヌス毒素製剤の商標である」という点です。これはアメリカ食品医薬品局(FDA)によって認可された製剤ですが、実際にはこれ以外にも様々な製剤があります。
編集部
シワ取り以外にも、ボトックス注射が有効なことはあるのですか?
林先生
笑ったときに歯ぐきが見えてしまうガミースマイルの改善や、口角アップの効果も期待できます。また、ボツリヌス毒素製剤には、比較的厚みがある筋肉の張り出し感を落とす効果があることから、エラ部分に注射してフェイスラインを小顔化したり、ふくらはぎに注入してひざ下を細く見せたりする治療もあります。さらに一例として、当院ではボトックス注射で目を大きく見せる施術が人気です。
※この記事はMedical DOCにて<「ボトックス注射」をやらない方がいい人の特徴はご存じですか? 持続期間や注意点も医師が解説!>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

