
■10年越しの夢、「ものを始めるのに『遅い』とかはないって思う」
――デビュー作は「次にくるライトノベル大賞」で文庫部門1位、10代・50代以上・女性読者の投票1位という4冠を達成しました。2作目の執筆はいかがでしたか?
【宮田俊哉】2作目を書いているときは、ゼロからイチを生み出した1作目とはまた違う感じで、不安というか苦しさがありました。1作目の『境界のメロディ』は、メジャーデビュー直前にデュオの相方を失った主人公のもとに、死んだはずの相方が現れるところから始まる作品なんですが、初めてのことばかりで、「これで合ってる?」って何度も思う瞬間がありました。でも4冠をとれたってことは、「あ、よかったんだ」って思えたんです。でも、その分2作目のプレッシャーはすごくありました。「これって本当におもしろいですか!?」って、何回も編集の人に聞いていました(笑)。
1作目も2作目も、小説を書くためにアイドルの活動をおろそかにする場面が一瞬でもあったら、もう全部やめる!と決めていて。アイドルも執筆も100%でやらなきゃっていう苦しさがありました。でも、そうやって苦しまないと、たぶん自分は物語を書けないと思っていて。執筆だけになっていたら書けなかった描写もあるので、アイドルをやっていたから、この作品を書けたと思うんです。
――多忙な宮田さんが執筆にここまで懸けるモチベーションは何でしょうか?
シンプルに「アニメが作りたい!」っていうのが、10年以上温め続けてる夢なんです。始まりはそれだし、今もそれが一番なんですけど、さらに「ものづくりが好き」っていうのも増えたかな。ラノベ・コミック化、そしてアニメ化という流れに憧れていたから、小説はその第一歩です。ドラマCDの制作では役者さんたちとも関わりがより深くなって、アニメを作ることへの思いがさらに強くなりました。
小学6年生からこの仕事を始めて、勉強は最低限しかやってないから、段落の書き出しを一文字下げることさえ知らないところからのスタートだったんです。「改稿」という文章をブラッシュアップする作業の過程で、構成を変えるために書いた原稿の順番を入れ替えたりして頭がぐちゃぐちゃになったり、頭を抱えたりするようなこともめっちゃあって。でも、学生の方が読書感想文に『境界のメロディ』を選んでくれたという投稿をSNSで見たりしたら、「ものを始めるのに『遅い』とかはないな」って思いました。時間はかかっちゃうかもしれないけど、また別の作品をゼロから作ったりもしたいです。

■ロンドン視察や偶然出会った「吉田兄弟」の津軽三味線の衝撃
――2作目の執筆のためにロンドンへ視察に訪れたそうですね。
【宮田俊哉】1作目を書いたとき、登場人物たちの「その後」は自分の頭の中で決めていました。大好きな漫画家・冨樫義博先生が、キャラクターのことをすごく作り込んでから作品を生み出してるっていうのを何かで読んで、その手法をマネしているんです。本作で主人公として描いたサムライアーは、作品のなかで一番格好いいバンド。彼らがロックの本場ロンドンに行く世界線を考えてはいたけど、まさかそれを作品にできるなんて思ってなかったんです。
2作目の話をいただいたとき、やっぱり「ロンドンに行かないと書けない!」って思ったから、スケジュールをぬって2泊4日の弾丸視察に行きました。マジでめっちゃ疲れた!大型犬10匹と散歩してたんじゃないかってくらいでしたよ(笑)。
パフォーマーが集まるピカデリーサーカスやビートルズでおなじみのアビーロードなどの名所にも行ったし、登場人物たちが訪れそうなデンマークストリートの楽器屋さんやパブなどにも行って。バスやタクシーとかの乗り物も、食べ物も、街の匂いなんかも、とにかく写真を撮って、メモしました。頭の中では、「アクション!」って感じで、目の前の風景の中でキャラクターたちがすごく喋っているんです。帰国してからも思い出すような印象的なことは、特に大事なことのような気がして、もう一回メモしたり。その記憶やメモをふまえて、会話のテンポとかを考えながら、小説に落とし込んでいきました。
――作中でロンドンのバンドに三味線を取り入れたのはどんな経緯でしょうか?
【宮田俊哉】おしゃれでしょ!?ロンドン視察では、和楽器を演奏している人に出会えなくて、「もしも、このなかに和楽器の演奏者がいたらかっこいいだろうな」って思っていたんです。
それで、帰国してから津軽三味線を売っているお店に行ってみたら、偶然、津軽三味線アーティスト「吉田兄弟」の弟さん・吉田健一さんがいらっしゃっていたんです。事情を話したら、たくさん話を聞いてくれて、いろいろ質問させてもらえたんです。「ちょっと弾くよ」って、日本のトップ奏者が俺だけのために目の前で弾いてくれて!それがもう、「ベベーン!」って、五臓六腑が震えるような一発だったんですよ。
「この一音が、ロンドンのあの場所で鳴っていたらとんでもないな!」って、イメージがブワ〜って膨らんで、キーマンとなる新メンバー・カインの印象的な登場シーンになりました。

■「俺、泣いちゃう」ドラマCDの収録現場で感じたアニメ化の片鱗
――執筆活動には、宮田さん自身の経験も重ねられているのでしょうか?
【宮田俊哉】悩みとか葛藤とか、キャラクターたちのセリフには俺の実体験が重なっている部分もあります。
例えば、サムライアーは日本でデビュー後、壁にぶつかってイギリスへ武者修行に行くことを決めます。キスマイは、CDデビューしてわずか18日で東京ドームでライブもしていて、たぶんすごく華やかに見られていたと思うけど、実は、みんなが想像する以上に苦しい思いもしながらそこに立っていたんです。
長い下積みを乗り越えてデビューできても、歌番組に出たら自分より歌もダンスもうまくてスタイルも顔もいい人がめちゃくちゃいっぱいいて。頑張っても、報われても、またとんでもないライバルが現れて、自信をなくしたりもして、それでも自分をスターだと応援してくれる心強い存在がいてくれて…みたいな。サムライアーたちに、同じような悩みや壁へぶつかっていってほしいなって思っていました。
――作中では、仲間同士でシビアな指摘をするシーンも印象的ですね。
カインがサムライアーの課題について、どストレートに言う感じですよね。作中ではもう少し優しく伝える描写にしてもいいかと思ったりもしたんですけど、やっぱり、厳しいことも言い合えることが本当の仲間だと思うところがあって。
例えばライブとかでも、メンバー同士で「あの歌のあの部分、リズム若干遅れてなかった?」「え…マジ?」っていうやりとりみたいな、自分では気付けないことも細かく言い合える仲っていいなと思うんです。
――特典のドラマCDは、前回に続いて伊東健人さん、SnowMan・佐久間大介さん、そして今回新たに内田雄馬さん、武内駿輔さん、斉藤壮馬さんと、豪華なキャストが参加されています。収録はいかがでしたか?
【宮田俊哉】いや~、もう最高です。役者さんは神様です。「タケシの歌は唯一無二、天才」みたいに俺が描いちゃって、誰がタケシ役をできるんだって思ったけど、内田雄馬くんがさらりとやってくれました。武内くんは収録現場でもずっとサングラスをかけてて、それが役のマコトとすごくマッチしてたし、伊東くんと斉藤くんが「サムライアーの音楽ってこんな感じかな」とか話し合う姿もすてきでした。もしも音楽を作れる機会があったら、伊東くんと斉藤くんが作ってくれたりしたら…なんて思ったりもしました。
そして、そんなスーパースター軍団のなかで共演していた佐久間もすごかった。俺のナレーション録りが最後だったから、ずっとみんなの収録を聴いていたんだけど「佐久間はレアルマドリードの中で、ちゃんと互角にサッカーしてる…!」みたいな(笑)。佐久間とは「こういうことができるようになりたい」とか、ごはんを食べながら話したりもするけど、本当に芝居もよくて、ひとりの役者として尊敬できるほどに進化してるのを感じました。佐久間を含めて、役者さんの芝居で十分伝わると感じたから、説明的なナレーションのシナリオを調整して削っていったくらいです。
アニメ化されて、このメンバーでアフレコする姿とかを見られたら、「俺、泣いちゃうぜ」って思いました。楽しみに待っててください!

撮影=八木英里奈
取材・文=笹山真琴
スタイリスト=柴田 圭
ヘアメイク=津谷成花
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