歯科医院において、噛み合わせの状態を診断する際、不正咬合の国際的な基準であるアングル分類に基づき、Ⅰ級、Ⅱ級、Ⅲ級という分類をもちいます。この分類は、単なる歯並びの見た目だけでなく、上顎と下顎の相対的な関係を上下の第一大臼歯の咬合関係によって評価することができ、診断の際に重要な指標となります。
この記事においては、このアングル分類の基準や、各級が持つ特徴、そしてそれに伴うリスクと歯列矯正による治療法について解説します。
噛み合わせのⅠ級、Ⅱ級、Ⅲ級の違い

このⅡ級は、さらに1類と2類の2種類に分けられます。Ⅱ級1類は、上顎の前歯が、下の前歯よりもかなり前方に突き出ている、いわゆる出っ歯の状態です。奥歯の噛み合わせがアングルⅡ級に該当し、口呼吸を伴うことが多く、口唇の閉鎖不全があります。
著しく上顎前歯が突出している場合は歯列矯正による改善が必要となります。Ⅱ級2類は、奥歯の噛み合わせはアングルⅡ級に該当しますが、上顎の前歯が内側に倒れて前歯の噛み合わせが深くなっている(過蓋咬合)状態です。
機能的な問題を伴うことも多く、矯正治療による改善が必要になります。 噛み合わせのⅢ級とはどのような状態ですか? 噛み合わせのアングルⅢ級とは、上顎の第一大臼歯よりも下顎の第一大臼歯が前方に位置しており、下顎の前歯が上顎の前歯よりも前に突き出ていることが多い、いわゆる受け口が多いのが特徴です。噛み合わせが大きくずれているため、歯列矯正によって改善が必要となることが多く、顎の骨格自体の問題が主な原因である場合は、外科的手術を伴う治療が必要となることもあります。
噛み合わせの違いによる影響

理想的な噛み合わせは、顎や歯に余計な負担がかからず、機能的で見た目のバランスがとれている状態です。
噛み合わせがⅡ級やⅢ級の場合はどのようなリスクがありますか? アングルⅡ級(出っ歯)やⅢ級(受け口)といった不正咬合は、横顔の美しさの基準とされるEライン(鼻先と顎先を結んだ線)を乱し、審美性を損なうことがあります。特に上の前歯が極端に出ているⅡ級1類の場合、自然にお口が閉じにくくなったり、無理にお口を閉じようとする癖がつき、横顔のシルエットに影響しやすくなります。また著しく飛び出した前歯は、外傷より破折してしまう危険性があります。なお、歯の健康を長期的に維持することを目標として、80歳になっても20本以上の歯を残せるようにするという8020運動が1989年から厚生省と日本歯科医師会の連携によって行われていますが、噛み合わせⅢ級の方でこの目標を達成した方はいません。噛み合わせの悪さは歯に負担がかかりやすくなるため、将来もしっかりと歯を残し続けるためには、噛み合わせの改善が推奨されます。 不正咬合にはどのような種類がありますか? 不正咬合には、下記のようにさまざまな種類があります。
叢生(八重歯)
上顎前突(出っ歯)
下顎前突(受け口)
開咬
空隙歯列・正中離開(すきっ歯)
過蓋咬合(ディープバイト)
交叉咬合
切端咬合
歯並びの問題で特に多いのが、叢生です。乱杭歯とも呼ばれ、代表的な叢生として八重歯などがあります。歯が生える土台である歯槽骨と歯の大きさの不調和により、歯列からはみ出して生えてしまい、でこぼこした歯並びになってしまっている状態です。この叢生は、ほかの不正咬合と複合して起こることが多く、アングル分類とは別に生じる歯の並びの問題です。
上顎前突は、上顎の歯が前突している状態です。この状態が奥歯の噛み合わせに連動している場合、アングルⅡ級に分類されます。顎骨自体が突出している骨格性のものと、骨格に問題はないが歯が傾斜している歯性のものがあります。
下顎前突は、下顎が前突している状態です。受け口や、反対咬合とも呼ばれています。この状態は、多くの場合アングルⅢ級に分類されます。骨格的な問題が原因である場合が多く、治療が難しい不正咬合です。治療をする場合長い期間を要するため、できるだけ若いうちから対策を行うことが大切です。
開咬は、奥歯をしっかり噛んでいるのに、上下の前歯は噛み合わずに、上下の前歯の間が空いてしまっている状態です。指しゃぶりや、舌で前歯を押す、舌を突き出す癖がある方がなりやすいです。
空隙歯列とは、歯と歯の間に隙間がある歯並びのことをいいます。全体的に隙間がある状態を空隙歯列と呼び、前歯の真ん中の隙間が開いている状態を正中離開と呼びます。
過蓋咬合は、奥歯を噛み締めたときに、上顎の前歯が下顎の前歯に過剰に覆い被さっている状態です。かぶっている高さが2〜3mmが正常な範囲ですが、それよりも著しく深く被さっていれば過蓋咬合といえます。
上顎の歯が、下顎の歯よりも内側に位置する状態を交叉咬合といいます。通常は上顎の歯が下顎の歯をわずかに覆うように噛み合わさりますが、交叉咬合では部分的に逆の噛み合わせになっています。
上顎の歯が下顎の歯に覆い被さらずに、上下の歯先があたる状態のことを切端咬合といいます。

