山本和行が語る“伝家の宝刀”フォークの秘密と王貞治・長嶋茂雄との対戦秘話<プロ野球 レジェン堂>

山本和行が語る“伝家の宝刀”フォークの秘密と王貞治・長嶋茂雄との対戦秘話<プロ野球 レジェン堂>

「プロ野球 レジェン堂」
「プロ野球 レジェン堂」 / (C)BSフジ

9月16日に放送された「プロ野球 レジェン堂」(毎週火曜夜10:00-10:55、BSフジ)。今回のゲストは阪神タイガースの優勝に貢献して“100勝100セーブ”を達成したレジェンド投手・山本和行だ。MCの徳光和夫と遠藤玲子とともに、山本の幼少期からプロ入り、そして王貞治・長嶋茂雄との対戦まで、濃密な野球人生を振り返った。

■夢を追いかけた少年時代と伝家の宝刀“フォークボール”誕生の裏側

山本は広島県能美島で育ち、小学生の頃から野球に熱中していた。しかし野球道具は十分になく、仲間とボールやバットを使い回す日々。そんな中、山本にとって憧れの存在だったのが国鉄スワローズ時代の金田正一だった。

小学5年生の夏休みに広島対国鉄戦を観戦し、金田の投球を目の当たりにしたことで「絶対プロ野球選手になろう」と決意。父親も夢を後押しするために転職し、家族で広島市内へ引っ越したという。

広島商業2年生の夏に甲子園出場を果たした山本だが、同世代には“マサカリ投法”で知られる村田兆治もいた。そうした経緯からか高校卒業後はドラフト指名に漏れてしまったものの、監督の勧めで入学した亜細亜大学で大きな転機を迎える。大学2年生のとき、山本にとって伝家の宝刀ともいえるフォークボールを習得したのだ。

通常より指のかかりを浅くする独自の握り方と、“投球中”に握りを変える高度な技術。スタジオで手の内を実演すると、徳光と遠藤も驚きの歓声を上げていた。

■王貞治・長嶋茂雄との記憶に残る対戦秘話も

プロ野球を目指す選手の多くは、強いチームへ所属して勝つことにこだわるのが一般的だ。しかしプロ入りを控えた山本が希望したのは、意外にも読売ジャイアンツ“以外”のセ・リーグ球団。当時の巨人といえばV9達成中の常勝軍団だったが、山本が巨人以外の球団を希望したのは「強いチームをバックに投げるのではなく、それに向かって投げたい」という理由があったためだ。貪欲に成長し、実力を高めたいという野球人としての矜持が込められていた。

山本は1971年のドラフトで阪神タイガースから1位指名を受けて入団。プロ初勝利は1972年7月5日の巨人戦で、王貞治・長嶋茂雄といったスター選手を擁する最強軍団を相手に9回2失点完投、“ミスタープロ野球”長嶋を4打席ノーヒットに抑えるという鮮烈なデビューを飾った。ちなみに長嶋との通算対戦成績は1割1分5厘と圧倒的に抑え込んだ一方、王には1976年にベーブ・ルースを超える節目の715号本塁打を献上したという印象深い記憶も残っている。

ある年、山本は不振に陥り勝てなかった時期があった。良いコースに投げているものの、惜しくもファウルやヒットを打たれてしまう。そこで「打者がどうバットを振って、どう考えているのか」を徹底的に観察。その結果、打者がバッターボックスに入る“前”に何を狙っているのかを見抜けるようになったという。逆に言えば、山本にとって苦手なのは“何も考えていないバッター”とも語った。

徳光が「長嶋さんは?」と問うと、「(苦手なタイプに)近かったですね。長嶋さんは全てを受け入れた“何でも来い”というタイプ」と分析。一方で王については「“甘いところに来たら絶対見逃さないよ”というタイプ。だから甘い球は絶対に投げられない」と懐古する。しかし本人から「コーナーにきっちり来られたら打てない」と聞いたことを機に膝元への制球を磨き、自信を深めていったと明かした。

■野球と真摯に向き合い続けてきた山本和行の人生

番組後半では、幻に終わったメジャー移籍の舞台裏も語られた。1984年オフに山本はメジャーへの移籍を希望したが、日本球界では前例がなかったためセ・リーグ会長の川島広守まで巻き込む騒動に発展。結果としてメジャー移籍の夢は叶わなかったが、このできごとがきっかけでFAをはじめとした制度が整備されることに。山本は自身の夢は叶わなかったものの、「あのとき川島さんが話を聞いてくれてよかった」と振り返った。

山本といえば100勝100セーブという華々しい実績にばかり目が行きがちだが、それ以上に“野球と真摯に向き合い続けてきた人生”が浮かび上がってくる。幼少期に父親が転職してまで野球に専念できる環境を整えたエピソードしかり、家族の支えもあってたどり着いた道。真摯に向き合う理由は十分だったとはいえ、スターとなっても初志を貫徹したのは山本の人間性によるものだ。

金田正一の投球を目の当たりにして「絶対プロになろう」と決めた少年が、努力と環境の後押しを糧にプロのマウンドに立ったサクセスストーリー。だが物語を成功に導いたのは、「常勝軍団に入るのではなく、常勝軍団に挑む立場になる」というストイックな姿勢だった。夢追う全ての人の胸を強く打つ、神回だったと言えるだろう。

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