ピルは、避妊のみならず、ほかにも様々な効果・効用があります。そこでピルの種類や副作用について「メディカルパークダイレクトタワー横浜」の沼崎 令子先生に解説してもらいました。「そもそもどんな薬なの?」という方は必見です。

監修医師:
沼崎 令子(メディカルパークダイレクトタワー横浜)
弘前大学医学部医学科卒業後、横浜市立大学産婦人科に入局し、横浜市立大学附属病院横浜南共済病院、神奈川県立がんセンターなどで、婦人科悪性腫瘍治療を主たる専門分野として研鑽を積みながら、地域の中核病院として婦人科良性疾患手術や、女性ヘルスケア、分娩などの周産期医療にも積極的に関わる。2024年、メディカルパークダイレクトタワー横浜院長に就任。医学博士、日本産科婦人科学会専門医/指導医/機構専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医・指導医、日本臨床細胞学会細胞診専門医・教育研修指導医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、母体保護法指定医、難病指定医。
編集部
ピルについて教えてください。
沼崎先生
「ピル」はもともと避妊のための薬剤であり、女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)の2種類を含む薬剤です。ピルにはいくつかの種類があり、含まれるエストロゲンの量によって分類されます。エストロゲンの量が少ないものは「低用量ピル」、やや多いものは「中用量ピル」と呼ばれています。
編集部
どのような違いがあるのですか?
沼崎先生
低用量ピルが認可されるまでは、ピルといえば中用量ピルが一般的でした。低用量ピルが認可されてからは、低用量ピルが処方されることがほとんどです。中用量ピルの方が副作用のリスクが高いというのがその主な理由です。低用量ピルは避妊に関して優れた避妊方法のひとつであり、安全性も高いと考えられています。また、ピルは①避妊を目的として用いるピル(OC/自費診療)と②月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療を目的として用いるピル(保険診療)に分けられます。低用量ピルの投与方法としては、月1回月経がくる「周期投与法」と月経がくる回数が少なくなる「連続投与法」があります。
編集部
ピルにはどんな副作用がありますか?
沼崎先生
ピルの一般的な副作用には吐き気や眠気、頭痛、体重増加、乳房の圧痛、ニキビなどがあります。特に飲み始めの時期に顕著に出ると言われていますが、3か月くらい継続内服すると徐々に気にならなくなる方が多いようです。また、血栓症のリスクは通常1万人あたりに1~5人ですが、ピルを内服している場合では1万人あたりに3~9人とわずかに増加します。ただし、妊婦さんでは1万人あたりに5~20人と言われており、リスクは妊娠中より低いと考えられています。また、まれに肝機能障害を起こすことがあります。
編集部
避妊以外の効果についてもう少し教えてください。
沼崎先生
避妊以外の副効用として月経痛や月経前症候群、過多月経の改善効果、月経周期の乱れなどに対する効果も認められています。ドロスピレノンという卵胞ホルモンを含むLEP製剤は月経前不快気分障害(PMDD)を改善する効果があります。また、将来的な卵巣がんや子宮体がん、大腸がんのリスクを減少させるとも報告されています。また月経周期を移動させることも可能です。こういった効能があるため、先ほどお話ししたようにピルは、①避妊目的と②月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療に分けられているのです。
※この記事はMedical DOCにて<ピルは「月経困難症」や「子宮内膜症」などの治療にも有効 避妊だけが効果じゃない>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

