距離感がおかしい
でも、彼の行動は確実にエスカレートしていった。教室が終わった後、大勢の受講者が建物から出ていく波の中で、武内くんが手を握ってきたのだ。慌てて手を引くと「あ、ごめん、階段危ないかと思って」と笑ったが、まさか手を握るなんてとびっくりした。
そして、ついにその日は来た。レッスンの休憩時間には背後から声をかけられた。
「萌子ちゃん、今日のレッスン予習してきた?」
その瞬間、彼は私の隣を通り過ぎるようにして、一瞬だけ、私の腰をさすった。私の全身の毛が逆立つのがわかった。反射的に数歩下がると、彼は何事もなかったかのように自分の席に戻り、テキストを開いていた。
(絶対、わざとだ)
こうしたいきすぎた接触を「自意識過剰」という言葉で片付けて良いのだろうか?いや、彼はあまりにも調子に乗っていると思う。
このとき、私はまだ知らなかった。この不快な再会が、私の平穏を完全に破壊し、そして私自身の手で戦い抜かなければならない地獄の始まりに過ぎないことを―――。
あとがき:「気のせい」で片付けられない不快感
日常の中の「小さな違和感」が、いかに人の心を蝕んでいくのかを描きました。萌子が最初「気のせい」「自意識過剰」と自分に言い聞かせるのは、波風を立てたくないという既婚女性特有の心理です。しかし、この「スルーしたい気持ち」こそが、武内のような人間には付け入る隙を与えてしまいます。この段階で、不快な接触はすでにハラスメントです。萌子の満たされた日常に泥を塗る、この不快な再会が、今後の大きな戦いの始まりになります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

