「偏食に悩む親御さんたちを、この料理で助けたい」
魔女の格好でブランディングする料理家・よっち。SNS総フォロワー数15万人超、クックパッド登録レシピ数543品(2025年11月時点)。一見ユニークなキャラクターの裏には、偏食の子どもに悩む母としての切実な思いと、11年間待ち続けた出版の夢がある。クックパッド食トレンド大賞2025「特別賞」に選出された彼女の料理は、今、多くの家庭を救っている。
「何も食べない」長男との格闘
よっちが料理に真剣に向き合うきっかけは、長男の偏食だった。
「ご飯も食べない。何も食べない。食べるとしたらパンをちょっとだけ」

長女の離乳食をきっかけに料理を始めたよっちだったが、長男の偏食は想像を超えていた。「本当に困って、いろんな人に相談して。『いつか食べるから』って言われてもすごく心配だったし、心残りっていうか」。保育士として働く中で、他の親からも同じ悩みを聞いていた。「これかーって、本当にきついなぁと思って」
当時はほぼワンオペ育児。長男と年子の次女は赤ちゃん。夫の夜勤弁当も作らなければならない。「もう今、自分が何を作っているのか分からない状況で、いつもイライラしてました」と当時を振り返る。

そんな中で生まれたのが「カモフラージュ料理」だった。「野菜を刻んでハンバーグに混ぜたり、食べられる卵焼きの中に白米を混ぜて食べさせたり。とにかく混ぜ込んでカモフラージュ」。見た目や風味を変えることで、子どもは食べてくれるようになった。「食べてくれるたびに『よっしゃ!』って思うようになって。おかわりしてくれたり」。そこから、カモフラージュせずに単品でも食べられるようになっていった。
カモフラージュから「節約かさまし」へ
よっち自身は、この料理を「節約」だとは思っていなかった。
「偏食を克服できたので、その技を皆さんに伝えたいという気持ちから始まった。それが実は節約につながってたというのを自分では気づかなくって」
「これ、食材費安いね」と指摘されて初めて気づいた。ちょうど物価高で食品がどんどん高くなっていく時期。「ちょうど合致するわと思って『節約かさ増し料理』っていう名前にした」。ポジティブな言葉が生まれてから、活動が大きく変わっていった。
実際、よっちの家庭は月3.5万円の食費でやりくりしている。だが本人は「私の中で全然節約してるように感じてない」と言う。
「安いものをバーっと買いあさってから、ここから何を作ろうかっていうのを考えるから。おいしさしか考えてない」
節約は結果であって、目的ではない。よっちの料理の本質は、おいしさと創造性にある。
彼女が駆使するのは「5大かさまし食材」だ。もやし、じゃがいも、えのきたけ、キャベツ、そして大豆製品(豆腐・油揚げ・厚揚げ)。「どれも食感に変化をつけることが得意な食材で、噛みごたえや味わいもアップします。単独でももちろん、重ねて使うとより効果的」。これらの食材は常にストックされている。

豆腐を凍らせてから水切りすると全く違う食感になる

