失敗という概念を消す

「野菜は基本5分、10分でいけちゃう」
りよ子が提案したのは、失敗しない料理という新しい概念だった。
「蒸し時間が長すぎると、多少色がくすんだり、すごく柔らかくなったりはするんですけど、おいしくないわけじゃない」
焦げない。火加減は不要。タイマーを忘れても大丈夫。この寛容さが、料理恐怖症の人々を解放した。
木のぬくもりが教えてくれた癒し
りよ子の最大の発見はせいろの持つ「癒し」という価値だった。
「癒し効果がある気がします。湯気と、なんかこの丸い木の見た目」
そして気づく。「木ってよく考えてみると日常であまり触れる機会がないなと思って。いつも手元にあるのはスマホやパソコン、紙ですよね。」
現代人が失った「木」との接点。せいろがその断絶を埋める。「心の余裕がちょっと生まれます」。10分の調理時間が、小さな癒しの時間となる。

