常に進化し続ける味

店ごとに炊き出すスープ
七宝麻辣湯の特徴は、味が常に進化していることだ。
「古典的なものを守り続ける料理人やお店も多いですが、僕はまったく逆の考えで、常に進化させていかないと、その古いものは無くなってくると思うんですよ」
石神は自動車メーカーを例に挙げる。「自動車メーカーも常に進化している。今では電気自動車もありますし、昔とは車の性能が全然違う。どんなものでも新しい技術を取り入れていくのは当たり前で、それを怠るとやっぱり続けるのは難しいだろうな」
この考えは、麻辣湯の味づくりにも反映されている。客の反応を見ながら、スパイスの配合を微調整し、新しい食材を試し、常に調理法を改良する。開業から19年たった今でも、それは変わらない。
スパイスが変える日本の食卓

薬膳スパイス(出典;AdobeStock)
日本の食文化について、石神は独自の視点を持っている。
「日本は世界の中で、中国と並んで食べる食材の数がとても多いと言われているんですよね。でも一方で日本は世界的にもスパイスをあまり活用していない国だと思っているんですよ」
家庭にあるスパイスは胡椒と七味や一味ぐらいで、山椒さえない家もあるという現状。なぜ日本はスパイスを使ってこなかったのか。
「日本は麹を使った調味料がかなり発達している。味噌や醤油もそうですし、料理酒も含め麹が中心。スパイスをこれまで料理の中で活かしてこなかった」
スパイスという要素が家庭料理の中に入ってきたのは、ここ最近だと石神は分析する。
「もともと使う食材は多いので、それに掛け算でスパイスを使うようになると、日本は相当バラエティ豊かな食文化になるんじゃないかなと思っています」

