ADHDは、注意力の欠如や衝動性・多動を特徴とする発達障害です。
ADHDの方は、性別や社会的な立場により、さまざまな悩みを持つことがあります。
本記事では、ADHDの診断基準や検査方法、ADHDと診断される方の人数、大人のADHD女性にみられる特徴、悩み、生活上の注意点などを解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
ADHDの基礎知識

ADHDとはどのような病気ですか?
ADHDとは、不注意や衝動性・多動により、社会生活や学校生活、日常生活を営むのに困難をきたす状態のことです。
不注意傾向がある方は以下のような困りごとを抱えることがあります。
一定時間集中を保つことが難しく仕事や授業に集中できない
予定や持ち物を忘れてしまう
タスクを先延ばしにしてしまう
衝動性がある方は、話を最後まで聞けない、順番を守れない、思いつきで行動をするといった悩みを抱えることが珍しくありません。多動がある方は、じっとしていることが難しい、常に手足を動かしているなどの様子がみられ、やるべきことに取り組めない悩みを抱えることもあります。
不注意、衝動性・多動の何が強く出るか、特性がどのような形で現れるかは個人差があり、生活場面での困りごとも多岐にわたります。
子どもの頃は多動が強くみられていて、成長とともに不注意や衝動性の問題が残るケースもあります。
ADHDの検査方法と診断基準を教えてください
精神疾患の定義や診断基準などが規定されているDSM-5では、ADHDの診断にあたり、症状の内容や持続期間、発症時期、複数の環境での出現状況などが基準として定められています。不注意や多動・衝動性の症状のうち一方または両方が6ヶ月以上続くこと、学校や家庭、職場など複数の環境で認められること、そして12歳以前から症状がみられることの3点を満たす場合、ADHDと診断されます。
ADHDは、検査結果のみで診断できるものではなく、問診や検査の結果、行動観察などから総合的に判断します。問診では、家族歴や幼少期の行動傾向などの生育歴を詳しく確認します。子どもの頃の通知表を参考にする場合もあります。
ADHDの評価では、質問紙法と知能検査がよく用いられます。
質問紙法は、本人が行動特性に関する質問に自己評価形式で答え、ADHDの傾向を把握します。
知能検査では、成人ではWAIS-IVが用いられることが多く、注意力や処理速度など各能力のばらつきを確認し、生活上の困難さを考える材料にします。
参照:『DSM-5と成人期ADHDの適正診断について』(精神神経学雑誌)
日本ではどの程度の人がADHDと診断を受けていますか?
DSM5によると、小児期のADHDの有病率は5%、成人期ADHDの有病率は2.5%とされています。日本での成人ADHDの有病率は、1.6%であるという報告もあります。日本でADHDが認知されてきたのは1990年代後半以降で、ADHDの概念が浸透しつつある状態であり、診断される方も増えています。ADHDと診断されてはいないが、ADHDの特性を持っているグレーゾーンの方も含めると、ADHDの特性で悩む方は報告されている人数よりさらに多いと考えられています。
参照:
『注意欠如多動性障害(ADHD)の疫学と病態: 遺伝要因と環境要因の関係性の視点から』(日健医誌)
『日本におけるADHDの制度化』(大阪市立大学社会学研究科)
ADHDの患者数に男女差がある理由を教えてください
ADHDの患者数は、小児期は3:1で男性が多いとされています。成人のADHDは、男性:女性が1.6:1と、小児期と比較して性差が少なくなる傾向です。ADHDの患者数の男女差は、ADHDの方が受診し診断に至る率の違いが一因です。
ADHDの特性は、男児は衝動性・多動の形で出る場合が多く、女児では注意欠陥の形で出ることが多い傾向があると考えられています。
学齢期早期には、衝動性としての特性が問題になる場合が多く、男児のADHDが見つけられやすい傾向があります。
参照:『DSM-5と成人期ADHDの適正診断について』(精神神経学雑誌)
大人のADHDの女性が持つ特徴と悩み

大人のADHDの女性によくみられる特徴を教えてください
大人のADHDの女性は、多動性よりも不注意や衝動性が生活のなかで現れやすいといわれています。不注意は、仕事や生活のなかでのケアレスミスや先延ばし、紛失などの困りごとにつながります。衝動性は、買い物や恋愛、人間関係などの困りごとを招きやすい傾向です。
ADHDの女性が抱えがちな悩みごとはありますか?
大人のADHDの女性が抱えやすい悩みは、成人女性に期待される役割、身を置くことが多い環境に密接に関わっています。
不注意によって生じる悩み
・支払いや行政手続きを先延ばしにしてしまう
・通帳や印鑑など大切なものを紛失する
・片付けができない
・仕事や家庭でのミスが多い
・遅刻しやすい
衝動性によって生じる悩み
・思いつきで大きな買い物をしてしまう
・親密ではない相手に個人的なことを話しすぎてしまう
・失言が多い
多動によって生じる悩み
・じっとしていられない
・貧乏ゆすりをしてしまう
ADHDの女性は、不注意や衝動性の特性が表に現れやすく、多動に関する困りごとは少ない傾向です。一方で不注意や衝動性による困りごとは多く、人間関係や社会生活に支障を来すことも珍しくありません。
ADHDの二次障害とはどのような状態ですか?
二次障害とは、元々ある障害を原因として新たに発現した症状や疾患を指します。ADHDの二次障害は、特性により不適応を起こし、度重なる失敗や叱責により自尊感情が低下して、精神的な問題が起こります。
二次障害は、外在化障害と内在化障害に分けられます。
外在化障害とは、気持ちのイライラや葛藤が他者に向けられる形で現れることを指します。反抗性人格障害や行為障害など、反社会的な行動につながる場合があります。
内在化障害は、ネガティブな気持ちが自分自身に向けて現れることを指し、強迫性障害や気分障害、抑うつにつながることがあります。二次障害は、本人の特性と環境とのミスマッチが大きいと、よりリスクが高まります。

