中耳炎の治療では、症状や原因によって使う薬が異なります。
この記事では、中耳炎の種類と治療法、使用される薬の効果や副作用、点耳薬の使い方と注意点を解説します。

監修医師:
小島 敬史(国立病院機構栃木医療センター)
慶應義塾大学医学部卒。医師、医学博士。専門は耳科、聴覚。大学病院および地域の基幹病院で耳鼻咽喉科医として15年以上勤務。2年間米国で基礎研究に従事の経験あり。耳鼻咽喉科一般の臨床に従事し、専門の耳科のみならず広く鼻科、喉頭、および頭頸部腫瘍疾患の診療を行っている。日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医。日本耳科学会、日本聴覚医学会、日本耳鼻咽喉科臨床学会の各種会員。補聴器適合判定医、補聴器相談医。
中耳炎の治療法と薬の種類

中耳炎にはどのような種類がありますか?
中耳炎は、発症の経過や炎症の起こり方によっていくつかのタイプに分けられます。代表的なものには、急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎の4つがあります。
急性中耳炎は、中耳炎のなかでも頻度が高く、特に小さな子どもに多い病気です。多くは感冒(上気道炎)をきっかけに発症し、ウイルスや細菌が鼻の奥から耳管を通って中耳に入り込むことで炎症が起こります。耳の痛み、発熱、耳だれ、難聴が主な症状です。
滲出性中耳炎は、痛みや発熱といった急性の炎症症状を伴わないタイプの中耳炎です。耳管の機能が障害されることで、中耳に液体(浸出液)が溜まり、炎症が続きます。耳管の働きが未熟な小児や、加齢で機能が低下した高齢の方に多くみられます。また、副鼻腔炎や上咽頭の腫瘍が原因となることもあります。主な症状は耳が詰まった感じや聴こえにくさで、乳幼児では言葉の発達に影響する場合もあるため、早めに診察を受けることが望まれます。
慢性中耳炎は、慢性化した中耳の炎症により、鼓膜に穿孔(穴)を生じている状態を指します。細菌感染を繰り返した場合や、耳管の働きが悪い場合に炎症が慢性化します。また、感染が関与しない特殊なタイプとして、好酸球性中耳炎やANCA関連血管炎性中耳炎などもあります。
真珠腫性中耳炎は、慢性中耳炎の一種で、鼓膜由来の皮膚組織の塊(真珠腫)が中耳内に侵入し、様々な症状を起こす病気です。幼少期に中耳炎を繰り返した場合や、鼻をすする癖がある場合に発症すると考えられています。細菌感染などの炎症によって急速に増大し、周囲の骨が破壊されて高度難聴や顔面神経麻痺、髄膜炎など重篤な合併症を起こすことがあります。
参照:『小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版』(日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)
中耳炎の治療法を種類別に教えてください
中耳炎の治療は、炎症の種類や重症度によって方法が異なります。
急性中耳炎では、抗菌薬の適正使用と、薬が効きにくい菌(薬剤耐性菌)の増加を防ぐ目的で、15歳未満の小児を対象としたガイドラインが整備されています。臨床症状と鼓膜の所見をもとにスコアリングを行い、合計点で軽症・中等症・重症に分類します。軽症の場合は、自然に治ることも多く、経過を観察しながら解熱鎮痛薬で痛みや発熱を抑える対症療法を行います。中等症以上では、ペニシリン系抗菌薬の投与が推奨され、原因菌や薬剤感受性に応じて薬を変更することもあります。耳の痛みや発熱、難聴が強い場合には、膿を外に出して炎症を和らげる鼓膜切開術を行うこともあります。
滲出性中耳炎の治療は、鼓膜の変化や聴力低下の程度に応じて選択されます。軽症では経過観察を行い、症状の改善がみられない場合は薬物療法や局所処置による保存的治療を行います。外科的治療が必要な場合は、鼓膜換気チューブ留置術や鼓膜切開術によって中耳の換気を保ち、排液による聴力の改善を図ります。
慢性中耳炎では、外来での耳洗浄や抗菌薬の内服、点耳薬によって細菌を除去し、化膿や炎症の悪化を防ぎます。薬で十分な効果が得られない場合には、局所麻酔日帰りで鼓膜を閉じることを目的とした鼓膜形成術や、全身麻酔で中耳全体の清掃と音を伝える仕組みを再建する鼓室形成術などをはじめとする手術加療が検討される場合があります。
真珠腫性中耳炎は、全身麻酔による鼓室形成術手術による真珠腫の摘出が基本です。手術を受けた後も再発の可能性があるため、長期的な外来通院が必要です。
参照:『小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版』(日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)
中耳炎の薬は中耳炎の種類によって異なりますか?
中耳炎の種類によって薬の内容や使い方は異なります。
急性中耳炎では、抗菌薬や解熱鎮痛薬が使用されます。
一方、滲出性中耳炎では抗菌薬を使用しないことが一般的です。粘液の排出を促すカルボシステインが使われることがあります。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎を合併している場合は、それらに対する治療も行われます。
慢性中耳炎では、抗菌薬の内服や点耳薬を用いる場合があります。感染によらない特殊な中耳炎では、副腎皮質ステロイドの局所・全身投与が行われることもあります。
中耳炎の治療で使用される薬の効果と副作用

中耳炎の治療薬で得られる効果を教えてください
抗菌薬は、細菌の増殖を抑えて炎症を鎮めることで、耳の痛みや発熱の症状を軽減します。解熱鎮痛薬は、痛みや発熱の症状を和らげる目的で使用されることがありますが、炎症そのものを治す効果は期待できません。カルボシステインは、耳管から粘液の排出を促すことで滲出性中耳炎の治療に役立ちます。
中耳炎の薬には副作用はありますか?
抗菌薬では、下痢や軟便などの消化器症状がみられることがあります。まれに発疹やかゆみ、さらにアレルギー反応として発熱や息苦しさが起こる場合もあります。解熱鎮痛薬は、胃の不快感を生じることがあり、長期間の使用や過量服用によって肝臓に負担をかけるおそれがあります。
また、点耳薬には、抗菌薬やステロイドを含むものなどいくつかの種類がありますが、不必要な投与により細菌が耐性化した場合、難治性になることがあります。また、真菌性外耳炎(カビによる感染)を誘発するばあいもあるため、医師が処方した薬を正しく使用することが大切です。
万が一、発疹や息苦しさなどの強い症状が現れた場合は、使用を中止して速やかに医師へ相談してください。
中耳炎の薬を使っても症状がよくならないときの対処法を教えてください
薬を使用しても症状が改善しない場合は、抗菌薬が原因菌に合っていない、または薬に対する耐性菌が関与していること、細菌が原因ではないことなどが考えられます。さらに、中耳や耳管の炎症が十分におさまっていない、あるいは滲出液が残っていることが原因となることもあります。このような場合は、再度診察を受けましょう。薬の変更や外科的処置を含めた追加治療が必要になることがあります。

