『あんぱん』語りを務めた林田理沙アナ、最終週は「回ごとの『ほいたらね』に込めた思いにも注目していただけるとうれしい」

『あんぱん』語りを務めた林田理沙アナ、最終週は「回ごとの『ほいたらね』に込めた思いにも注目していただけるとうれしい」

連続テレビ小説「あんぱん」語り・林田理沙アナウンサー
連続テレビ小説「あんぱん」語り・林田理沙アナウンサー / ※提供写真

今田美桜が主人公を務める連続テレビ小説「あんぱん」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)の最終週が放送中。この度、語りを担当する林田理沙アナウンサーからコメントが到着した。

■「あんぱん」とは…

連続テレビ小説第112作目となる本作は、「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかしと妻・暢をモデルにしたオリジナル作品。戦前から戦後と激動の時代を生きた“ハチキンおのぶ”こと朝田のぶと、夫となる柳井嵩があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでの人生を描いた愛と勇気の物語。

主人公・朝田のぶ役を今田が、夫・柳井嵩役を北村匠海が務め、脚本は連続テレビ小説「花子とアン」、大河ドラマ「西郷どん」の中園ミホが担当する。

■林田アナ「その時の生の感情やインスピレーションを大事にしました」

――「あんぱん」の語りに決まった時のお気持ちを教えてください。

上司から語りに決まったことを告げられた時は信じられなくて、本当に私でいいのか何度も聞き返してしまいました。うれしさがこみ上げてきて、まさに、「たまるかー!」という気持ちでした。実はこれまでナレーションにはどちらかというと苦手意識があったんです。でも制作統括からは、柔らかい声の性質が「あんぱん」の世界観にぴったりで、脚本の中園(ミホ)さんも含めての総意だったと言ってもらえて本当にうれしかったです。その期待に添える語りができているかずっと不安もあったんですが、最近、番組の収録で初めて中園さんとお会いした時に、「自分の耳に間違いはなかった」とおっしゃっていただいて、よかった~と本当にホッとしました。自分のキャリアの中でも大きな転換点になるとも感じています。

――これまで、やなせたかしさんの作品に触れる機会はありましたか?

中学・高校時代に合唱部に入っていたので、やなせさんが作詞された曲を歌う機会が多くありました。好きな曲は「さびしいカシの木」などいろいろあるのですが、どの詞も、心温まる中にどこかものがなしさがあったりと、やなせさんの感情の瑞々(みずみず)しさが表れているなと感じていました。今回語りをすることになって、あの時に自分が感じていたやなせさんの詞の温もりが今につながったようで、不思議なご縁を感じました。

――語りを収録する時に心がけていたことを教えてください。

これまでナレーションに取り組む時は、番組の内容を論理的に読み解いて、自分の声の高さをどう設計していくかを意識してきましたが、今回は自分が感じたことを大切にした方が、表現のしやすさがありました。あまり事前に映像を見すぎないようにして、ナレーション収録の場で映像を見たその時の生の感情やインスピレーションを大事にしました。同時に、語りに違和感があるとその先が頭に入ってこなくなってしまうと思うので、見ている方と一緒に物語を見守る気持ちで、ということも心がけていました。

――語りとして印象に残っているシーンを教えてください。

105回(8月22日放送)の、のぶ(今田美桜)が家出したあとに、太ったオンちゃん(アンパンマンの原型)が誕生するシーンです。「この太ったおじさんが、のちに子どもたちに大人気のアンパンマンになるのですが、それはまだ先のお話……ほいたらね」という語りをした場面。のぶが戻ってきた時、涙ながらに嵩(北村匠海)に思いをぶつけるのですが、嵩は「のぶちゃんはそのままで最高だよ」とのぶの全てを肯定するんです。このシーンは本当の意味で2人がひとつになって通じ合ったという感じがしています。どのような人間関係もそうだと思いますが、本当のことがなかなか言えなくなってしまうこともあると思います。のぶと嵩はお互いすれ違ってしまい、一時的に離れて暮らすことになりましたが、2人が心の奥底からぶつかり合い、分かり合えたこと、それがアンパンマンの生まれる源となったという意味で特別な回だと思いますし、アンパンマン誕生のシーンを語らせていただいたことは感慨深いものがあって、とても印象に残っています。

■戦争パートは「今の私たちに通じる恐ろしさを教えてくれたと思っています」

――登場人物の中で自分と似ていると思うキャラクターはいますか?似ているところやそのキャラクターへの思いも教えてください。

「1度目標を決めたらまっしぐらに突き進んでいく」ところは、のぶに似ていると思います。のぶや嵩の姿を見ていると、その時は失敗したと思ったことでも、決して無駄になることはないということや、反省する強さ、失敗しても立ち上がって次に進もうとする強さを感じて、勇気づけられます。2人の関係性からも支え合うとはこういうことだ、と改めて教えてもらった気がします。自分ひとりでは自信がないことも、きっとできるよと言ってくれる誰かが側にいたら、2倍も3倍も頑張れると思うんですよね。改めて自分が出会った人や支えてくれた人に感謝したいと思いましたし、自分も一緒に信じて、一緒に走れる、誰かにとってそんな人になりたいなと強く思いました。

――「あんぱん」では戦争の悲惨なシーンも描かれますが、ドラマを通して伝えたいメッセージや教訓など、感じるところがあれば教えてください。

今の私たちに通じる恐ろしさを教えてくれたと思っています。「あんぱん」は特に戦時中の人たちの感情の揺れ動きが生々しく描かれていて、とてもハッとさせられました。

例えば、のぶが「愛国の鑑(かがみ)」になる当初の原動力って、「戦争に行く豪ちゃん(細田佳央太)の役に立ちたい」という純粋な気持ちだと思うんです。それが、結果的に国のために戦うことは正義という思想に変わってしまった。一方蘭子(河合優実)はこんな戦いに何の意味があるのかと激しくのぶを責めますが、果たして自分は蘭子のように反旗を翻(ひるがえ)せただろうかと思い巡らせました。私はこれまで戦中と戦後を歴史上で切り分けて考えてしまっていたのですが、本当は地続きで、戦争で夢が絶たれてしまった人の命、その分まで生きないといけないという使命感や、苦しみを背負ってきた嵩や八木(妻夫木聡)のような人たちが、これまでの国の形を作ってきたということに改めて思いを寄せる機会になりました。

――最終週では、どのようなところに注目してもらいたいですか?

「何のために生まれて、何をして生きるのか」が極まる週だと思います。人から支えてもらったことに感謝してそれに応えようとか、背中を押してくれた人への感謝とか、敬意を忘れないのぶと嵩の思いが結実していく様子をぜひ皆さんもいっしょに見届けてほしいなと思っています。最終週はほぼ毎日「ほいたらね」が出てきますが、その回ごとに「ほいたらね」に込めた思いにも注目していただけるとうれしいです。

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