●適正手続が保障されないと、一方的に不利益を課すことが可能になってしまう
適正手続が必要な理由はいくつかあるのですが、もっともシンプルで分かりやすいものとしては、恣意的に不利益を課すことを避けるためです。
たとえば刑罰の場合、「警察・検察が悪いと判断したからあなたは処罰されます。理由はいえません」ということが可能になってしまえば、恣意的な処罰がいくらでもできてしまうことになります。
今回のケースでは国分さんは、複数の自らの行動に問題があったことを認めてはいます。しかし、現時点では、本当に降板相当の問題のあることをしていたのかも分かりませんし、何かしらの事実が複数あったとして、それらが本当に降板相当だったのかも、検証のしようがありません。
なお、「検証」はマスコミがする必要はなく、不利益を受ける当事者である国分さんが検証できるかどうか、という問題です。
●日本テレビのコメント
報道によると、日本テレビ側の、降板理由を具体的に説明できない理由に関するコメントの趣旨は以下のようなものです。
1)「コンプライアンス違反行為があった」ということ以上は公にできない。
2)ヒアリングで国分氏が話した内容だけでもコンプライアンス違反に該当する。「青少年に見てもらいたい番組」に選定されている「ザ!鉄腕!DASH!!」の降板を即断せざるをえない。
3)身元の特定を防止し、二次加害を防ぐなど、関係者の保護のため国分さんが求める「答え合わせ」は難しい。
しかし、個人的な意見ではありますが、このコメントは「国分さんに具体的な違反行為について告げない理由」にはなっていないように思います。
1)について 「公に」する必要はありません。国分さんに伝えるかどうかという問題です。
2)について そうであるならば、ヒアリングの場で国分さんがこのように発言した、それが降板理由だ、と国分さん自身に示すことが可能ではないでしょうか。
3)について 被害者は国分さんに身元を特定されることをおそれている、ということになりそうです。
ただ、この被害者が国分さんの知り合いであれば、そもそもその被害者の身元を特定されるという話にはならないのではないでしょうか。
また、知り合いではあるが、未だ国分さんに知られていない特定の情報を知られたくない、ということであれば、その部分については秘匿することも可能だと思われます。
逆に知り合いでないのであれば、被害者の個人情報などについては明かさずに匿名性を保ったうえで、国分さんの心当たりのあるどの事案なのかを示せば良いように思います。
国分さんが希望している謝罪についても、被害者が国分さんをおそれているような事情があるのであれば、謝罪などは代理人を通じて行い、国分さん自身が直接被害者と関わらない形にすることも可能であるように思います。
このように考えると、少なくとも現時点で分かっている情報からは、国分さんに「どういった理由で降板となったのか」を説明する必要がない、という理由としては、十分ではないように思います。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

