
なぜ『北斎漫画』は世界を変えたのか?「知る」楽しみ
『北斎漫画』と聞いて、今の「マンガ」を想像する方も多いかもしれません。しかし、その実態は「絵手本」、つまり絵の教科書でした。
文化11年(1814)、北斎が名古屋の門人宅で描いた300以上の下絵から始まったこのシリーズは、北斎没後の明治11年(1878)まで続く全15編の大ロングセラーとなりました。
森羅万象を描く筆力
本展の第1部「知る」展示では、約64年にもわたる出版の経緯とその影響力に迫ります。
北斎漫画の凄みは、描かれた対象の幅広さにあります。人々の日常、職人の動き、動植物、魚類、建物、そして風景……。
「森羅万象を描く絵師」と称された北斎の観察眼と、それを一瞬で紙に定着させる筆のスピード感。教科書として作られながら、あまりの完成度の高さに一般庶民がこぞって買い求めたという熱狂が、展示作品から伝わってくるはずです。
『北斎漫画』三編「風雷」
『北斎漫画』三編「三ツワリの法」
『北斎漫画』五編「輪蔵ノ内」
『北斎漫画』五編「猿田彦太神・天臼女命」
ユーモアとデザインの宝庫!「楽しむ」北斎ワールド
第2部のテーマは「楽しむ」。
全15冊、総図数およそ3,900図とも言われる『北斎漫画』の中には、思わず吹き出してしまうようなユーモア溢れるイラストが満載です。
『北斎漫画』十一編「似西洋銃海魔伐・弓締」
『北斎漫画』三編「雀踊り」
『北斎漫画』三編「雀踊り」
動きの瞬間を切り取った躍動感と愛嬌は、現在のアニメーションの原点とも言えます
変顔・妖怪・不思議な生き物
『北斎漫画』初編「動物」
ただ上手いだけでなく、滑稽さや奇妙さを愛する北斎の遊び心が爆発しています。
本展では、こうした多種多様なイラストを展示し、デザインの参考書として、あるいは純粋なエンターテインメントとして、江戸の人々と同じ目線で楽しむことができます。
