夏帆の温度
「私が思うその人の魅力を、クリエイター同士の自由な化学反応で、ファッション誌だからできる表現で見せたい」と語るスタイリスト長澤実香さんの隔月連載。今回のゲストは、少女のピュアさを持ちながらしなやかに進化していく姿がプラダの持つ女性像とクロスオーバーする俳優、夏帆さんです。
トップス¥429,000、スカート¥335,500※共に予定価格、シューズ[ヒール8.5㎝]/参考商品(全てプラダ/プラダ クライアントサービス)
長澤さんが「少女から大人に成熟する過程のイメージにも思える」と表現した、ボルドー×レッドの配色が美しいルック。一見、コンサバティブな組み合わせのようでいて、フリルやギャザーのディテール、少女時代を思い起こさせる赤の色使いなど、大人の女性をチャーミングに見せるアンビバレントな魅力が詰まっている。
ニット¥341,000※予定価格(プラダ/プラダ クライアントサービス)
「プラダは毎回可愛いなぁと必ずチェックするブランドです」と話す夏帆さん。揺れるチェーンの先にモダンアートのようなビジューがついたニットは、1枚で主役級のアイテム。
ドレス¥583,000、シューズ[ヒール5.5㎝]¥214,500※共に予定価格(共にプラダ/プラダ クライアントサービス)
ロールネックに大きなクルミボタンがアクセントになったエレガントなデザインに、切りっぱなしのヘムがモダンさを添えるドレス。「デザインはONだけど、ムードはOFFのドレス。クラシカルなのに、どこか肩の力が抜けた感じが女性らしくて美しいと思います」と長澤さん。
ドレス¥671,000※予定価格(プラダ/プラダ クライアントサービス)
水彩画のようなフラワープリントが施されたドレスは、シボ感のあるエアリーな素材で、風が吹き抜けるバルキーなシルエットが心地いい。長澤さんがイメージしたのは夏から秋の変わり目、祖母の家の縁側。寝転ぶ少女のころの姿と、大人の女性になった今がシンクロして見えてくる、そんな一瞬。
シャツ¥313,500、スカート¥214,500、バッグ〈プラダ アンシェネ〉[H18×W22×D11.5㎝]¥517,000※全て予定価格(全てプラダ/プラダ クライアントサービス)
「幼いころ、いつもテディベアのぬいぐるみを抱えていた少女が、大人になった今では、プラダの素敵な赤いバッグを持っている。そんなストーリーが思い浮かびます」と長澤さん。レザーにヴィンテージ加工を施した新作バッグは、古着好きな夏帆さんもお気に入り。役作りで変えたというピンクベージュの髪色が、夏帆さんの大人のような少女のような佇まいをさらに雰囲気あるものに。
長澤実香の視点
私は、プラダというブランドの根底にあるのは、「成熟した大人の持つ少女性」だと思っています。少女のころのピュアさを大人になってもずっと持ち続けている女性って誰だろう……と考えを巡らせたとき、真っ先に浮かんだのが夏帆さん。彼女の淡々とした雰囲気―冷たい“淡々と”ではなく、温かくて、懐深い“淡々と”したムードの持つ温度感とか純度のようなものが、プラダにリンクするような気がしたのです。
奇しくも今シーズンのプラダのテーマは「女性らしさとは何か?」。ミウッチャ・プラダは、ジェンダーレス時代に、改めて「女性らしさ」を問いかけることで新たな議論を引き起こすことに興味を抱き、ラフ・シモンズは、「思考の呪縛から自分たちを解放し、全く異なるものを作り出すことに挑戦したい」と考えたのだそう。プラダが提案する「今の女性らしさ」を夏帆さんが表現するなら? そう考えたとき、私のなかでキーワードになったのが「少女のころの記憶」。
晩夏、おばあちゃんの家のような日本家屋の陰影と静けさのなかで、ふと心に蘇る少女時代に想いを馳せる―その、じんわり心を満たす穏やかな記憶は、まさに夏帆さんの“淡々と”したアトモスフィアに通じるものがあると思ったのです。クラシックとモダン、少女と大人を行き来しながら、モードの世界に新たな風を吹き込む―、そんなプラダの世界観と夏帆さんの感性が共鳴したストーリーになったと思います。
ドレス¥583,000※予定価格(プラダ/プラダ クライアントサービス)
和室に差し込む日の光は、まるでスポットライト。浮かび上がるのはしっとりと美しいブラックドレスと、遠くを見つめる横顔。
PROFILE_夏帆(かほ) 1991年生まれ、東京都出身。2004年に俳優デビュー。映画やドラマなど話題作に多数出演。10月から放送のドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS系にて毎週火曜夜10時〜)でW主演を務める。
PROFILE_長澤実香(ながさわ・みか) スタイリストとして女性誌や講演などで活躍。ハイファッションをリアルなコーディネートに落とし込むスタイリングに定評があり、数多くの俳優やモデルから絶大な支持を得る。
direction & styling:MIKA NAGASAWA
hair & make-up:AYA MURAKAMI
text:MIWAKO YUZAWA
special thanks:THE TOYAMA MEMORIAL MUSEUM
otona MUSE 2025年10月号より

