
草なぎ剛が主演を務めるドラマ「終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)。妻を亡くした主人公が、シングルファーザーとして1人息子を育てながら遺品整理人として人々に寄り添う物語で、切なくも温かな大人の恋も描かれていく。このたび、WEBザテレビジョンでは、プロデューサーを務める河西秀幸氏にインタビュー。「銭の戦争」(2015年、フジテレビ系)に始まる“戦争シリーズ”でタッグを組んできた草なぎについて、また物語後半のポイントについて教えてもらった。
■「後半にかけて新しい草なぎさんの姿がもっと出てくると思います」
――放送スタート後、視聴者からの反響はどのように感じましたか?
草なぎさん演じる主人公・鳥飼樹の、遺品整理人としてご遺族様への寄り添い方、中村ゆりさん演じる御厨真琴とのやりとりなど、誠実で優しい感じがすごくいいという感想が多い印象を受けました。
草なぎさんとは、「銭の戦争」(2015年)、「嘘の戦争」(2017年)、「罠の戦争」(2023年)という、いわゆる“戦争シリーズ”でご一緒させていただいていますが、復讐に燃えたぎる、怒りがあらわになるといったキャラクターが多くて、今回はどちらかというと草なぎさんのパブリックイメージに近いのかもしれません。わりと皆様に好意的に受け止めていただいているかなと感じています。
――公式サイトにアップされた、脚本家の高橋美幸さん、監修をしている遺品整理人の増田裕次さんとの3ショットインタビューで、「草なぎさんがこれまでやっていない役どころ」を考えられたとありました。
そうですね。ただ、樹は優しいだけではなく、死者に対する尊厳をちゃんと持っているキャラクターでもあります。真琴の嫁ぎ先である御厨グループが自殺を隠蔽しているということに対して、許せないという思いを抱くので、御厨グループ、特に死者への尊厳を持たない人間である真琴の夫・利人(要潤)にガツンと言うシーンがあったり、草なぎさんが表現する優しいだけじゃない部分もちゃんと描きたいと思っています。樹はそれに対してどう戦っていくのか、どんな言葉を投げるのかというのがポイントとしてあります。
――その樹と利人の対峙でいうと、第4話での草なぎさんの目の演技にもSNSで反響が見られましたね。
敵対する人間に対してガッと向かっていく“戦争シリーズ”とは違う迫り方というか。そこは監督とも話したことで、相手をぐーっと追い詰めるというのは、これまでさんざんやってきたので、そうではない、芯の通った新しい草なぎ剛の相対する感じを模索しました。内に秘めた何かがにじみ出てくるような。そういう意味で後半にかけて新しい草なぎさんの姿がもっと出てくると思います。
――草なぎさんとキャラクターについて何かお話されましたか?
ご本人的にはこの「終幕のロンド」を気に入ってくださっているなという感じはありました。最初は「試練だ、試練だ」みたいなことをおっしゃっていたので(笑)、役をなかなかつかみにくいような印象はあったのですが、だんだんドライブがかかっていったというか。
戦争シリーズでは、役柄としてはっきりとしていたのに対し、今回の寄り添う感じの正解というのは、やはりやりながら模索されたのではないかと思うんです。ご遺族様だったり、真琴だったり、“受け”の要素が多いので。
■中村ゆりの魅力「微妙な心理描写の演技がうまい」
――真琴役を中村ゆりさんにお願いしたのは?
以前、2019年のドラマ「パーフェクトワールド」でご一緒したときに、本当に素敵な女優さんだと思って。ただ、どちらかというとヒロインポジションというより、ヒロインのそばにいる女性で、幸せになりにくい役が多いなという印象でした。そこで草なぎさんの相手役となるヒロインとすると新鮮に映るのではないかと思いました。
嫁ぎ先の御厨家では虐げられ、実母との関係にも悩みながら、樹に心を許していくという真琴という役は、いろんな引き出しがある方じゃないと難しいだろうなと思っていました。そこを、中村さんはうまくやってくださっていますね。2話や3話であった、母のこはる(風吹ジュン)に本当は優しく接したいのにできなくて、強く当たってしまうんだけど、後から反省するところなど、微妙な心理描写の演技がうまいです。
一方で、ドラマ全体からすると泣いていないほうがいいというシーンもあるのですが、ときにエモーショナルになり過ぎて、思わず涙が出てしまうことがあって、それだけ気持ちを入れて臨んでくださっているんだなと感じました。
――真琴は、母・こはるの過去を知って、母への思いがまた変わっていくことになりますよね。
そうですね、母が不倫をしていたということで、不倫に対する拒否感というのはあると思うんですね。そこから自分がそれに近いような形になっていくときに、真琴はどうするんだろうと。母はあんなことを言っていたな、こんなことを言っていたなということを思い出しながら、最終的にどういう選択をするのか。
実は、こはるの言葉が後半につながっていくんです。その言葉が樹に対する姿勢として響いてくるので、ぜひ視聴者のみなさんにはこはるの言葉を意識していただきたいです。
■樹と真琴の恋について
――樹と真琴の恋は、真琴が結婚しているという状況ですが、複雑な関係にされたのはどうしてですか?
いわゆる大企業グループの御曹司の妻と惹かれ合う関係にするというのは、最初の段階で作っていたことなんです。
ただ、あまりドロドロした感じにはしたくなくて。どうしても気持ちが惹かれてしまうことはあるよねと。そこに視聴者の方も共感してもらえたらいいなと思っています。結婚していても、素敵な人を素敵だなぁと感じることはあると思うんです。そういう精神的というか、憧れみたいなもので、一線を越えないプラトニックな大人の関係にしたいと思っています。
――3話で視聴者もかなりの驚きとなった、利人と真琴の絵本の担当者・静音(国仲涼子)との不倫が明らかになりました。そこと対照的な感じになるのでしょうか。
そうですね。あと、八木莉可子さん演じるゆずはと、塩野瑛久さん演じる海斗の愛もあって、こちらはさわやかな、ほほ笑ましい若者たちの恋愛を描ければと。そういう意味では、男女の恋愛描写は3つありますね。
■以前よりも増した草なぎの「座長感」
――撮影現場の様子はどうでしたか?
草なぎさんの座長感が、前回の「罠の戦争」のときよりも増したような気がしました。例えば、撮影の合間に「スタンバイ中」とスタッフみたいなことをおっしゃってて、それについて聞いたら「僕、現場を仕切ってるから」と。
そういえば、中村雅俊さんが“揚げまんじゅう”を差し入れしてくださったとき、草なぎさんが見ていたのですが、撮影中は一切食べ物を口にしない方なんですね。だから食べられないなぁと思っていたら、「スタンバイ中、揚げまんじゅう」と韻を踏むように言って。それに周りの人が笑ったんです。そこでウケたからよかれと思われたのか、今度は現場のど真ん中、カメラマンや監督もいるセットの中で、同じように言ったんです。すると、そのときはみんな真剣で、さほどウケなかった(笑)。それ以降、「揚げまんじゅう」は言うことはなくなりましたけど、ほほ笑ましかったですね。
ちなみに、この「スタンバイ中」は、11月28日(金)に放送される香取慎吾さんとの特番「大相撲フードバトル~2025 冬の陣~」(夜8:00-9:58、フジテレビ系)の収録中にも言って、バラエティ班のスタッフを驚かせていました(笑)。
若手俳優にも積極的に声掛けして、ヴィンテージの服の話とかされていましたが、勉強になったと思いますよ。
――では河西プロデューサーの印象に残っているシーンはありますか?
第1話の、樹が亡くなった妻のレシピを見るところは、撮影現場でも、編集中にもグッときました。中村雅俊さんが演じる遺品整理会社の社長・磯部が寄り添って遺品整理をしている中から、亡き妻にレシピを見つけるというシーンでしたが、うつ状態で、ひげもちょっと生えてて、ボロボロな感じからの涙を流す草なぎさんの芝居がすごかったです。戦争シリーズのような復讐劇のときは、そういう泣くシーンはあまりなかったので、ああいう感情的に泣くシーンは、心をつかまれました。
――そのときをきっかけに樹が遺品整理人になる大切なシーンでもありましたよね。そうした遺品整理人とご遺族のドラマだけでなく、御厨グループの話を加えたのはどうしてでしょう?
1話完結のエピソードをつむいでいくというやり方もありますが、そうはしたくないねと最初から話していて、「死」に絡むテーマを多面的に描きたいとは思っていました。御厨グループのサスペンス部分というのは、主に脚本の高橋さんのアイデアです。監修の増田さんに取材で聞いた話ですが、ある遺品整理の現場でご遺品がほとんどなかったことがあったそうなんです。ある職業の方が亡くなったときで、職場の方がご遺品を持っていってしまわれたと。それを高橋さんが興味持たれて、自殺を隠蔽する御厨グループというサスペンスとしてふくらませていった感じです。
■「今をどう生きるか」を考えるきっかけに
――いよいよクライマックスに向かっていますが、注目してほしいところ、また視聴者の方に伝えたいことをお聞かせください。
やはり、樹や磯部が御厨ホールディングスと対立する裏で、気持ち的に惹かれ合う樹と真琴がどうなっていくのかが一番見てほしいところです。御厨の問題が当然関わってきて、二人の関係にも影響していきます。
それから、先ほど「死者の尊厳」について触れましたが、タイトルの「終幕」につながること。世の中で唯一絶対なものが死ぬことだと思うんです。人は絶対に死んでしまうので、その“終幕”をいろんな描写で描いているのがこのドラマです。だからこそ、「今をどう生きるか」みたいなことを考えるきっかけになれればいいなと思います。
※草なぎ剛の「なぎ」は、「弓へんに前の旧字体その下に刀」が正式表記
◆取材・文=神野栄子

