1996年には朝ドラ『ひまわり』(NHK)のヒロインを演じたことを皮切りに、1998年には人生のパートナーとなる反町隆史さん主演の学園ドラマ『GTO』(フジテレビ系)のヒロインを好演。1999年からは医療ドラマ『救命病棟24時』(フジテレビ系)のヒロインを務め、人気作に押し上げて長期シリーズ化に貢献しました。
そして、20世紀最後の年である2000年に放送された恋愛ドラマ『やまとなでしこ』(フジテレビ系)は、社会現象を巻き起こすほどの大ヒットに導き、その時代の恋愛ヒロインを象徴する存在に。
それから時を経て2011年、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)では、無表情でミステリアスという斜め上をいくヒロイン像を作り出し、最終話で世帯平均視聴率が40.0%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)という驚異的な記録を叩き出したのです。こうして次々と新たなヒロイン像を築き上げてきたのが“俳優・松嶋菜々子”でした。
脱ヒロイン化を進めており、順調に次のステージへ
そんな松嶋さんですが、近年は脱ヒロイン化を進めており、順調に次のステージへとたどり着いています。
9月に大好評のまま最終話を迎えた朝ドラ『あんぱん』(NHK)では、今田美桜さん演じるヒロインと対立する“嫌われ義母”役で、作品にピリッとしたスパイスを加えていたのは記憶に新しいところ。『あんぱん』は『アンパンマン』の作者・やなせたかし先生の妻・暢を主人公のモデルとした作品です。ヒロイン・のぶを今田さんが演じ、夫・嵩を北村匠海さん、のぶの母を江口のりこさん、嵩の母(ヒロインの義母)を松嶋さんというキャスティングでした。
義母・登美子は文化的な教養がありエレガントな佇まいながら、勝ち気で自由奔放な性格のため、嵩を苦しめ、振り回し続けていたキャラクターだったのです。
義母の嫌われっぷりのおかげでヒロインが引き立った
登美子は劇中で3度も結婚しているのですが、最初の夫との子である嵩を幼い頃に捨てて出ていきます。にもかかかわらず2番目の夫と離婚すると、8年もほったらかしにしていたのに、いけしゃあしゃあと再び嵩の前に現れて翻弄するのです。そんな登美子に対して怒り心頭ののぶが、「今ごろ何しに戻ってきたがね! これ以上、嵩を傷つけるのはやめちょってください」とブチ切れたシーンは、物語序盤のハイライト。のぶの他者を思いやる愛情深さや大人を相手にしても物申せる芯の強さが、視聴者に伝わったのです。
ただ、裏を返せば、そのシーンで今田さん演じるヒロインの魅力が際立ったのは、登美子の一挙手一投足の振る舞いがとにかくムカつき、視聴者からのヘイトを集めていたからこそ。松嶋さんがヒールに徹していたからこそ、ヒロインが抜群に輝いたのです。

