健太の姉・美雪は結婚式費用の前払いのために60万円を貸した。しかし式後も返済の連絡がなく、確認したところ、義妹である愛梨が返済を渋っていることが判明。美雪への返済が暗雲に包まれる。
【健太視点】幸せの始まりと準備の現実
「俺と……結婚してください!」
「ありがとう……よろしくお願いします!」
俺(健太)は今、幸せの絶頂にいる。長年の交際の末、恋人の愛梨と結婚することになった。特段、倦怠期や破局の危機もなく、危なげない交際が続いてはいたけれど、プロポーズは緊張した。でもその分、快諾してくれた彼女の笑顔が特別なものに見えた。
プロポーズを終えると、婚約の挨拶から婚姻届の提出までトントン拍子で進めることができた。「結婚を反対されないか」という不安もあったが、両家とも俺たちの結婚を歓迎してくれた。それに、両家顔合わせの席ではお互いの両親が意気投合していたのも安心した。
そんな環境にも恵まれ、俺と愛梨は遂に夫婦となった。そして、夫婦になって最初の一大イベントとして、楽しみにしていたのが結婚式だ。プロポーズが成功してから、2人で少しずつ話し合ってきた理想を形にして、一生に一度の大切な思い出にしようと胸は高鳴っていた。
結婚式の準備は式場探しから披露宴の余興の依頼、引き出物にまで2人のこだわりを詰め込んだ。費用は気になったが「一生に一度」という言葉で誤魔化して、思い思いの計画を立てた。そして式場側との最終打ち合わせ、様々な要望をしたから費用は大きいと覚悟はしていたものの「一部を後払い可能」と聞いていたため、そこまで不安視していなかった。
しかし、その考えの甘さを思い知らされることになる。前払い分の金額が自分たちの考えていた予算を大きく超えてしまったのだ。前払いとして全体の7〜8割の額が必要とのことだったのだが、その部分を夫婦で見過ごしてしまっていた。
ご祝儀払いができないか交渉したものの、特別扱いはできないということで、譲歩されることはなかった。なす術ない俺たち夫婦は一度見積もりを持ち帰り、親族から支援を得る道を模索することになった。
それからというもの、俺たちはそれぞれの親から支援を受けられないか、連絡を取った。愛梨の両親からは支援を受けられたのだが、俺の両親は最近手術などでお金がかかったばかりで支援は無理だった。俺はわらにもすがる思いで、姉に電話をかけた。
「その……結婚式の費用、貸してくれないかな?」
「え?」
電話越しに聞こえる姉の声には怒りや呆れを感じ、自分の情けなさや惨めさを痛感した。けれど、なりふり構ってられない状況にただ姉に頼るしかなかった。
最終的に、姉夫婦から必要な額の支援を受けることができ、何とか結婚式の前払い金を準備することができた。姉には感謝しかない。
結婚式の成功とご祝儀の余裕
その後、無事に式を行うことができた。夫婦のこだわりが至る所に散りばめられ、たくさんのゲストに囲まれた式には、夫婦揃って大満足だった。
式を終えた2日後、俺たちはご祝儀の集計と名簿・お礼状作りを始めた。その日の昼過ぎ頃には集計と名簿作りは終わり、ご祝儀の総額が出た。そこから後払い分を差し引いても、返済には困らないほど余裕のある額だった。

