度々ご飯をもらいにくるようになった
でも、これが「図々しさ」の芽生えだったことに、私はこの時、全く気づいていなかった。そんなことが、私の出産予定日が近づくまで、週に一度か二度のペースで繰り返されるようになった。連絡もなく突然やって来て「ご飯が食べられなくて」と訴えるのだ。
「里美、今日、お昼ごはんなんだけど…」
「ごめん、本当に助かる。これ、健と2人分だけ…」
さすがにしつこい、図々しいと思う日も増えてきたけれど、ご飯を食べられなくて困っている人を前にして、断ることはできなかった。夫の和樹には、奈美子さんの状況を伝えてはいたけれど、「困っているなら仕方ない」と、最初は理解を示してくれていた。
予定日が近づくと、私は実家と家を行き来するようになった。家を留守にすることが増えると、奈美子さんは私の予定をしつこく聞いてくるようになった。
「里美、今どこ?いつ家に帰ってくるの?私、またご飯がなくて…」
「そろそろ里帰りから戻る?いつなら家にいる?」
連絡の内容が、完全に私への気遣いではなく、自分の要求を押し付けるものに変わっていったことに、私は恐怖にも似た疲労を感じ始めていた―――。
あとがき: 同情の代償
「ご飯がない」と弱々しく訴える奈美子さんの姿は、里美の同情心を強く刺激しました。以前のサバサバした彼女からは想像もできない姿に、里美は純粋に友人として助けたいと思ったのでしょう。
しかし、この里美の「優しさ」は、奈美子さんにとって「里美の善意は搾取できる」という誤った確信を与える結果となってしまいました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

