滞在1か月を超えるころ、義母は勝也に対して「愛子をとるのか、母親をとるのか」と、とんでもない脅し文句を口にします。絶望した愛子は陸人を連れて実家へ逃げるように帰省して―――。
義母の攻撃に心を削られる
義母がわが家に滞在を始めてから実に1か月。リビングの空気は重く、私は、義母の視線に怯える日々でした。
その日の夜、義母は勝也を自分の寝室に呼び出し、何か長く話していました。ただの愚痴ではないような、ただならぬ空気です。寝室から出てきた勝也の顔は、血の気が引いたように青ざめていました。
「愛子、母さんがとんでもないことを言い出したよ」
勝也は力なくソファに座り込みました。
「お義母さん、なんだって?」
勝也は深く息を吸い込み、絞り出すように言いました。
「愛子といることを取るのか、今後は母さんを大事にするのかって」
「は?」
長年の理不尽な文句の集大成のような言葉に、私は驚きよりも、むしろ「とうとう来たか」という感覚を覚えました。
「いったいどういうこと?」
「愛子が母さんを目の敵にするのに耐えられない、俺が母さんを大事に思うなら、愛子と別れて陸人と実家に帰ってきなさいって」
―――は?
義母のでっちあげの不満のせいで、私はこの家から追い出されようとしているのでしょうか。そしてなぜか義母は、陸人まで自分のものにできると思っている。もう病的な自己中心的さです。
離婚しかない…?
勝也は苦悶の表情を浮かべながらこういいます。
「俺はそんなことしたくないからさ…愛子、母さんに謝罪してくれない?」
「謝罪ってなに?私何もしてないのに陰口叩かれて、謝らないといけないわけ?」
「母さんと向き合ってほしいだけだよ、俺だってうまくやりたいからさ。そうじゃないと、別れるしかなくなるだろ?」
「え?…なんですって?」
別れるという選択肢が、勝也の口からあっさり出てきたことに、私はショックを受けました。私たちには陸人がいるのに。
「勝也は、私と陸人よりも、お義母さんとの関係が大事なのね」
「そうじゃないけど…」
「もういい」
その夜、私は一睡もできませんでした。このまま義母と夫といる生活は、もう耐えられない。でも、陸人から父親を奪うのはかわいそうなのではないか、という葛藤が頭の中をぐるぐる回りました。

