ぼのこさん(@bono_gurai)は、SNSやブログを中心にリアルでコミカルな漫画を公開している。2024年12月にX(旧Twitter)に投稿した「『それって接客なの?』お客様から叱られた話」は、商品を一方的に勧めるアパレル店員の接客態度を客のマダムが注意するというエピソードで注目を集めた。本作を描いたきっかけや苦労した点などについて、ぼのこさんに話を聞いた。
■実体験をベースにした「リアルを含んだ創作」




本作の誕生について、ぼのこさんは「アパレル販売員・店長として働いていたころの体験をもとに、働く人の心の揺れや葛藤を描きたいという思いから生まれました」と語る。基本的にはフィクションだが、エピソードや感情の多くは実際の出来事ややりとりをベースにしており、複数の体験を掛け合わせた「リアルを含んだ創作」だという。
描くうえでの苦労は、日常のやりとりという身近な題材ゆえの難しさだ。「その中にある小さな違和感や感情の揺れを、読者に『自分ごと』として感じてもらえるよう丁寧に描くことを心がけています」と、構成や演出に時間をかけている理由を明かした。
■企業と客の「正解」の違い
主人公の春子が客から叱られたことについて、自身が春子の立場ならどう思うか尋ねると、「私自身も新人時代は、よかれと思ってした接客が裏目に出てしまう経験がたくさんありました」と振り返る。
企業にとっての「正解」と、消費者にとっての「正解」は異なって当然だという。「本質的に突き詰めていけば、消費者視点を極めることがビジネスの成果につながりますが、春子ほどの経験値ではそこまで理解するのは難しく、叱られれば当然落ち込みます」と分析。しかし、その失敗があったからこそ価値観のズレに気づけたはずであり、「私ならしっかり反省して次に活かそうと考えますし、春子もきっとそう思ったことでしょう」と語った。
■「売りたい服」と「顧客ニーズ」の狭間で
春子が自分の売りたい服を勧めていた点について、ぼのこさんも似た経験があるという。「販売員時代、自分の好みや店が売りたい服に目が向きすぎて、お客様のニーズに気づけなかったことが何度もあります」と明かす。本当に必要なのは、表面的な好みだけでなく、ライフスタイルまで想像する力だと気づいたそうだ。
また、アパレル業界には在庫リスクの観点から積極販売が求められる「強化品番」が存在するという。「押し売りにならないよう、その商品を必要とするお客様を見逃さない目と判断力が大切だと感じています」と述べた。
今後も、働く中で感じる違和感や言葉にしづらい感情に焦点を当てた作品を描いていきたいというぼのこさん。本作のシリーズ「アパレる」では、販売現場の人間関係を深掘りしていく予定だ。
取材協力:ぼのこ(@bono_gurai)
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

