外傷性くも膜下出血のリハビリ
外傷性くも膜下出血からの回復には、早期からの継続的なリハビリテーションが不可欠です。リハビリは、患者さんの回復段階に合わせて、「急性期」「回復期」「維持期」の3つの段階に分けて進められます。
この長期的な回復プロセスにおいて、ご家族や周囲の人のサポートが不可欠です。患者さんの身体的・精神的な回復を支えるために、以下のようなサポートが必要となります。
・転倒防止のための環境整備:麻痺などの後遺症で転びやすくなっている場合があるため、自宅内の段差をなくしたり、手すりを設置するなど、転倒を防ぐための環境を整えることが大切です。
・精神的な支え:患者さんは病気や後遺症によって不安や孤独感を抱きやすくなります。定期的に会話の時間を設け、前向きな気持ちを引き出すための精神的なサポートが非常に重要です。
・介護サービスの活用:ご家族が一人で介護の負担を抱え込まないよう、介護保険制度や地域のリハビリ施設、訪問リハビリなどの社会的なサービスを積極的に活用することが推奨されます。
急性期リハビリ
患者さんの命の状態が安定し次第、救急病棟や脳神経外科病棟で、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士がベッドサイドでリハビリを開始します。この時期の目標は、合併症の予防です。具体的には、寝たきりによる筋力低下や関節が固まるのを防ぐために、ベッド上での体位変換や関節を動かす訓練、座る練習などが行われます。
回復期リハビリ
急性期を脱して容態が安定すると、リハビリテーション専門の病棟へ転院し、より集中的なリハビリが開始されます。ここでは、理学療法士が、起き上がる、立つ、歩くといった基本的な運動機能の回復を目指し、作業療法士が、食事、着替え、トイレ、入浴などの日常生活を送るための動作の自立に向けた訓練を行います。また、言語聴覚士は話すことや食べる(飲み込む)こと、言語理解などに必要な訓練を行います。
維持期リハビリ
リハビリは短期的なものではなく、数か月から数年にわたる長期的な取り組みとなります。病院でのリハビリが終わり退院した後も、機能の維持やさらなる向上を目指し、病院の外来や訪問リハビリ、自宅での自主練習を続けることが重要です 。
「外傷性くも膜下出血の治療」についてよくある質問
ここまで外傷性くも膜下出血の治療などを紹介しました。ここでは「外傷性くも膜下出血の治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
外傷性くも膜下出血が保険適用される条件について教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
外傷性くも膜下出血の治療費やその後の生活に関する保険の適用については、公的医療保険と民間の生命保険とで大きな違いがあり、注意が必要です。
日本の公的医療保険(健康保険、国民健康保険など)は、外傷性くも膜下出血の治療に適用されます。治療費が高額になる場合でも「高額療養費制度」を利用することで、自己負担額が年齢や所得に応じた一定の上限額に抑えられます。この制度は、多くの患者さんの経済的な負担を大幅に減らす、重要な公的な支援です。
民間保険が適用されるかどうかは、加入している保険の種類や特約の内容が大きく関係します。特に注意が必要なのが、三大疾病特約(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)です。多くの三大疾病特約は「脳卒中」を対象としていますが、ここで言う「脳卒中」は病気が原因で発症した場合を指すのが一般的です。
外傷性くも膜下出血は、その名の通り「外傷(けが)」が原因で起こるため、たとえ診断名に「くも膜下出血」が含まれていても、三大疾病特約の保障対象外となるケースがほとんどです。この点は多くの患者さんが誤解しやすく、給付金が受け取れないといった問題につながる可能性があるため、ご自身の保険契約内容を事前に確認することが重要です。

