

■国宝 源氏物語絵巻とは?
紫式部による日本最古の長編小説「源氏物語」を、文章(詞書)と絵で表した巻物を「源氏物語絵巻」という。平安時代から現代に至るまで何度も絵画化され、さまざまな「源氏物語絵巻」が作られてきた。これらのなかで、現存する最古にして最高傑作とされるのが、徳川美術館と五島美術館が所蔵する国宝「源氏物語絵巻」だ。江戸時代に尾張徳川家と阿波蜂須賀家を経て伝わり、尾張徳川家の伝来品(以下、徳川本)は徳川美術館、阿波蜂須賀家の伝来品(以下、五島本)は五島美術館に所蔵されている。さらに、断簡として9点が現存(うち2点は所在不明)。今回の展覧会では、これらすべてが一堂に公開されている。

■見どころ1:人物の表情と、2つの不義密通
会場でぜひとも注目してほしいのが、登場人物の描き方。目を細い線で、鼻を「く」の字形で表す引目鉤鼻で描かれているが、よく見ると目は一本線ではなく何本もの細い線を重ねて瞳の位置を表現。あえて強い個性を表現せず、こういった繊細な描写によって表情や人物の心情を示している。

また、徳川本と五島本が合わさることで、第36帖「柏木」から第40帖「御法」までが通しでそろった。このなかで、「源氏物語」の神髄ともいえる2つの不義密通が描かれている。
1つは、「柏木(三)」で描かれる、光源氏の妻・女三宮と柏木の不義密通。光源氏は、腕に抱く赤子(薫)の父は柏木だと知りつつも我が子として慈しみ、そこに深い苦悩を見て取れる。

もう1つは、「鈴虫(二)」で描かれる、光源氏と父である桐壺帝の后・藤壺中宮の不義密通。藤壺中宮が生んだ冷泉帝は、表向きは光源氏の異母弟だが本当は実の子。冷泉帝の容貌は光源氏に生き写しであり、何も知らない夕霧(光源氏の実子)もそろった複雑な人間模様を象徴的に描いている。

■見どころ2:徳川本が巻子装になり、初の一斉公開
国宝「源氏物語絵巻」は、詞書と絵が交互に配置された長い巻子装として伝来していた。昭和7年、徳川本は、保存の観点から巻子装を解体して絵と詞書を1枚ずつ台紙に貼り付けた額装に改装。同年、五島本も額装に改装された。それから時は流れて平成24年、徳川本の絵15図に劣化や損傷が見られるようになったため修理を実施。改めて保存の安全性と展示方法の両面から検討し、徳川本は絵を一段ごとに分けた15巻の短い巻子装に戻すことになった。

徳川美術館では、令和3年に前期・後期の入れ替え展示で修復の成果を公開しているが、巻子装の全巻一挙公開は今回が初。徳川本は巻子装、五島本は額装という、異なる姿で鑑賞できる。平安の人々が親しんだ絵巻物本来の楽しみ方を、ぜひ体感してほしい。


■見どころ3:平成復元模写により、鮮やかな色彩がよみがえる
900年もの長い年月により変色や褪色してしまった国宝「源氏物語絵巻」を、平安時代の姿によみがえらせる「平成復元模写事業」が平成11年から17年にかけて実施された。本来の色鮮やかな色彩や、見る角度によって変わる銀のきらめきを目に、平安時代へと思いを馳せたい。

■特別展「国宝 源氏物語絵巻」開催概要
会期:2025年11月15日~12月7日(日)
会場:徳川美術館 本館展示室
料金:一般1600円、高大生800円、小中生500円
開館時間:10時~17時(最終入館15時30分)
休館日:月曜日
■企画展「徳川林政史研究所連携企画 尾張家臣団」が同時開催
期間中、企画展 徳川林政史研究所連携企画「尾張家臣団」も鑑賞できる。こちらは、文書や武具、工芸品などさまざまな歴史資料から、尾張家臣団の実像に迫る企画展だ。第14代将軍徳川家茂(いえもち)が腰に指していたという「脇指 銘 来国光(らいくにみつ)」が初公開!見ごたえ満点の徳川美術館に足を運んでみては。


■企画展 徳川林政史研究所連携企画「尾張家臣団」開催概要
会期:2025年11月15日~12月14日(日)
会場:徳川美術館 名古屋市蓬左文庫展示室
料金:一般1600円、高大生800円、小中生500円、12月9日(火)~14日(日)は一般1400円、高大生700円、小中生400円
開館時間:10時~17時(最終入館15時30分)
休館日:月曜日
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