
右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をコミカルかつ分かりやすく描くキクチさん(@kkc_ayn)。母親の自宅介護と看取りを描いた前作『20代、親を看取る。』に続き、今度は父が病に倒れるエピソードを描いた『父が全裸で倒れてた。』が反響を呼んでいる。
母を看取ってから約2年。一人っ子として頼れる家族がいない中、父の闘病にどう向き合ったのか。今回は、ガジェット好きな父との病室でのやり取りや、抗がん剤治療の現実について話を聞いた。
■「こっちのセリフだよ」病床の父がかけた言葉



入院中の父から「あまり無理しないでちゃんと休むんだよ」と言われ、思わず「いや、こっちのセリフ(笑)」とツッコミを入れたキクチさん。自身の体がつらい状況でも、娘の体を第一に気遣う父の姿に、キクチさんは尊敬の念を抱いたという。
「『親だから』というのを抜きにしても、この状況でも私のことを心配してくれるのは、一人の人間として本当に尊敬しています。正直、私は未熟者でどうしても自分のことを優先してしまいます。それでも、この両親の元に育った私は、“大切な人の助けになる”という姿勢を大事にしていきたいと思っています」
また、70代にして病床で「プロジェクター時計」を欲しがる父の“ガジェット好き”な一面も描かれる。「元工業デザイナーの父に贈るものだし」と、結局キクチさんもネットサーフィンに夢中になって選んだというエピソードは、緊張感のある闘病生活の中でのほっこりする一幕だ。
■「抗がん剤が効いていない」医師の冷静な対応に救われて
しかし、現実は厳しい。医師からは「最初の抗がん剤が効いていない」という事実を告げられる。用意されていた3つの治療方針(3本の矢)のうち、早くも1本目が折れてしまったのだ。
「抗がん剤が効いていないと聞いて、うろたえました。でも主治医は『想定の範囲内』というような反応で、そんなに焦ることではないのかもと心を落ち着かせることができました」
経験豊富な主治医の「薬が効かないことは珍しいことではなく、複数のパターンを用意しているのは当たり前」という淡々とした姿勢が、キクチさんを冷静にさせてくれたという。
つらい状況でもユーモアを忘れず、親との時間を大切にするキクチさんの姿は、親の老いに直面する多くの世代にヒントを与えてくれるはずだ。
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