●国の「再犯防止」方針に逆行する委託費不足
こうした経験があったため、今年10月に、更生保護施設や自立準備ホームの委託費が切り詰められているという話を聞いたときは耳を疑った。
関係者によると、法務省の予算が不足し「原則6カ月まで滞在できる」とされているにもかかわらず、1〜2カ月ほどで施設を出てもらうよう求める運用が示されたという。
高止まりする再犯者率を前に、国は「息の長い支援」を呼びかけてきた。また今年6月には、「立ち直り」を重視する新たな刑罰「拘禁刑」も導入された。
今回の委託費切り詰め問題は、こうした再犯防止政策の流れに明らかに逆行している。

●重大事件の加害者もいずれ社会に戻る
愛媛で今年3月に起きた傷害事件。路上で面識のない女性をナイフで切りつけた男性は、刑務所を出てから、わずか8カ月しか経っていなかったという。
松山地裁は懲役4年6カ月の実刑判決を言い渡したが、数年後には社会に戻ってくる。
記者が取材している中には、過去に子どもを2人殺害し、出所後に再び事件を起こして服役した受刑者もいる。彼も近く刑期満了を迎える見通しだ。
これらは極端な例かもしれない。しかし、全国の刑務所では、毎日のようにさまざまな背景を抱えた受刑者が出所している。
家族や親族に見放され、帰る場所のない人も多い。何度も裏切られながら、そうした人たちを受け入れているのが、更生保護施設であり自立準備ホームである。
委託費不足については、平口洋法務大臣が11月21日の衆院法務委員会で「補正予算をすでに要求した」と明らかにした。今年度分については補填される可能性が出てきたものの、「そもそも現在の水準が低すぎる」という声は根強い。
重大事件が起きるたびに厳罰化が叫ばれるが、再犯者を生まないための環境作りの重要性にも、もっと関心が向けられてほしい。

