早朝のJR秋葉原駅で「電車」が4分早く出発しSNS「迷惑」…「大事な用事」に遅れ、損害出たら賠償請求できる?【弁護士が解説】

早朝のJR秋葉原駅で「電車」が4分早く出発しSNS「迷惑」…「大事な用事」に遅れ、損害出たら賠償請求できる?【弁護士が解説】


中央・総武線各駅停車

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 人身事故や混雑などを理由に、電車が遅延することは珍しくありません。そんな中、新聞の報道によると、JR秋葉原駅(東京都千代田区)で11月28日午前4時50分ごろ、同54分発の中央・総武線各駅停車の中野発千葉行き普通電車(10両編成)が、定刻より4分早く発車し、ホームには約200人が取り残されたということです。この日の秋葉原駅の千葉方面の後続電車は午前5時21分発で、ホームに取り残された客は約30分待つことになったといいます。車掌と運転士が秋葉原駅の発車時刻を確認しなかったのが原因だと報じられていますが、この件について、SNS上では「絶対にやってはいけないことだ」「早朝にこれは迷惑」「割と珍しいミス?」などの声が上がっています。

 今回のケースのように、もし電車を定刻よりも早く発車させてしまった場合、鉄道会社側や当該の電車を担当した運転士、車掌はどのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。また、電車が定刻よりも早く発車したことで、当該の電車に乗る予定だった人が乗車できず、大事な用事に遅れて何らかの損害が出た場合、鉄道会社に賠償を請求することは可能なのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

賠償請求は困難

Q.そもそも、電車を定刻よりも前に発車させた場合や、定刻よりも遅く発車させた場合、鉄道会社や当該の電車を担当していた運転士、車掌はどのような罰則を科される可能性があるのでしょうか。

牧野さん「電車を定刻よりも前に出発させた場合や、定刻よりも遅く発車させた場合に鉄道会社や当該電車を担当していた運転士や車掌に科される可能性がある罰則は特にありません。遅延による鉄道会社に対する損害賠償請求については、鉄道会社と乗客との間に旅客運送契約が成立しており、鉄道会社の旅客営業規則などの『運送約款』が適用されます。

列車遅延による損害賠償については、JR東日本の旅客営業規則では、『列車が運行時刻より遅延し、そのため接続駅で接続予定の列車の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車に接続を欠いたときまたは着駅到着時刻に2時間以上遅延したとき』には、乗客は、乗車券の有効期間の延長や旅客運賃の払い戻しが請求できる規定があります。

そのため、旅客営業規則に従えば、1時間以上の列車接続を欠いたか、着駅到着時刻に2時間以上遅延した場合であれば、乗客は乗車券の有効期間の延長や旅客運賃の払い戻しを請求できる規定になっていますが、その時間に満たない遅延については、旅客営業規則では、有効期間の延長や旅客運賃の払い戻しを請求できないことになります」

Q.JR秋葉原駅で11月28日午前5時前、電車が予定発車時刻よりも4分早く出発しました。もしこのような事態が発生し、電車に乗る予定だった人が乗車できず、「試験会場に遅れて到着し受験できなかった」「就職試験の会場に遅れて到着し、受験を認められなかった」「商談に間に合わず、契約が成立しなかった」など、何らかの損害を被った場合、鉄道会社に賠償を請求することは可能なのでしょうか。

牧野さん「JR東日本の旅客営業規則では、先述の時間数に満たない遅延の場合でも、特に利用者が損害賠償請求できないとは規定されていません。そのため、理論的には、旅客運送契約違反や民法の不法行為を根拠に、電車が予定発車時刻よりも早く出発したことで大事な用事に間に合わなかった結果、被った損害の賠償を請求することは可能です。

しかし、電車が予定発車時刻よりも早く出発もしくは遅く出発したことで生じた遅延の場合、遅延と損害との間の『因果関係』を証明することが困難な場合や、代替交通手段を利用することで損害を回避できた場合が多く、鉄道会社に損害賠償請求するのは一般的に難しいでしょう。

例えば、電車の出発が予定発車時刻よりも早まったり、遅くなったりしたことが原因で商談に遅れ、成立しなかった場合でも、遅延と商談の不成立との間に『因果関係』を証明することが難しいですし、タクシーを使用した場合でも、他に代替する交通機関を利用すればタクシー代の支払いを回避できた場合には、鉄道会社に損害賠償を請求するのは難しいでしょう。

しかし試験に遅れ受験できなかったケースや就職試験に遅れ面接を認められなかったケースでは、具体的な損害金額を証明することは非常に難しいですが、試験や面接を受けられなかったことによる精神的な損害(慰謝料)を請求できる可能性はあります」

Q.電車が予定発車時刻よりも早く出発したり、遅く出発したりしてしまった場合、鉄道会社にはどのような対応が求められるのでしょうか。

牧野さん「『利用者に遅延や発車時刻を告知して代替の交通機関を利用することを推奨する』『勤務先などへ提出する遅延証明書を直ちに発行する』などの対応が求められます。鉄道会社による遅延証明書の発行は、勤務先での勤務開始が遅れても給与減額などの損害を回避することができるため、電車の利用者にとっては給与が減額されない、鉄道会社にとっては損害賠償請求されないというメリットがそれぞれあります」

配信元: オトナンサー

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