
関西地方を中心に長年愛され続けている「吉本新喜劇」。現在は劇場だけでなく、BSよしもと(BS265ch※全国無料)で全国に届けられている。花月うどん屋や花月旅館といったお決まりの舞台で繰り広げられる、笑いと人情味あふれるドタバタコメディー。そこには、60年以上にわたって受け継がれてきたお約束の世界が広がっている。数々の芸人のオリジナル番組を放送しているBSよしもとの中でも、ここでしか見られない新作公演「BSよしもとpresents吉本新喜劇」は、番組編成の中心的な存在になっている。東日本・関東圏の人にとっては知っているようで深く知らない「吉本新喜劇」の基本についておさらいしてみよう。
■テレビと共に誕生したお笑いのビジネス新モデル
吉本新喜劇の歴史は、1959年に大阪・うめだ花月劇場が開場したと同時に始まった。当初は「吉本ヴァラエティ」という名称で、テレビ放送とタイアップした新たな演芸のビジネスモデルとしてスタートした。しかし、その船出は順風満帆とは言えず、初日の観客はわずか17人だったという。
その後、花紀京や岡八郎といったスターたちの活躍により人気は上昇。1962年には現在の「吉本新喜劇」へと名称を変更し、なんばグランド花月(NGK)をはじめとする劇場で毎日公演が行われるようになった。
吉本と言えば、漫才やコントのイメージが強いと思うが、吉本新喜劇で行われるのはその名の通り、劇であり、「吉本新喜劇」は“劇団”だ。座長が公演ごとに一座を率い、脚本も毎週書き下ろされるため、劇場に足を運べば常に新しい笑いに出合うことができる。
しかし、1980年代はテレビを中心に起こった漫才ブームの煽りを受け、新喜劇の人気は低迷。一時は存続の危機に立たされたこともあった。だが、そこは笑いの吉本。そんな逆境も「吉本新喜劇やめよッカナ?」キャンペーンでむしろ話題に変え、見事復活を遂げた。
現在では、なんばグランド花月での本公演を中心に、全国各地でのツアー公演も積極的に開催。2024年には65周年を迎え、韓国・釜山公演を含むワールドツアーも成功させるなど、その人気は国内にとどまらず、世界へと広がりを見せている。

■ここが面白い! 吉本新喜劇の3つの魅力
歴史を知ったところで、ここからは吉本新喜劇がなぜこれほどまでに長く愛され続けるのか、その面白さの秘密に迫る。
1)「分かっているのに笑ってしまう」予定調和の笑い
物語の舞台は、うどん屋、旅館、商店街など、庶民的な場所がほとんどだ。そこで繰り広げられるのは、吉本金融からやって来た借金取りとの攻防や男女の恋愛トラブルといった、どこかで見たことのあるようなシチュエーションばかり。しかし、このお決まり、お約束の展開こそが吉本新喜劇の真骨頂だ。
「そろそろあのギャグが来るぞ…ほら来た!」という期待感と、それに応えるギャグの流れが笑いを生み出していく。この予定調和による笑いはもはやマンネリではなく、一種の様式美と言えるだろう。
2)アドリブが生み出す予測不能な笑い
計算され尽くしたお約束の一方で、予測不能なアドリブも新喜劇の魅力だ。特に辻本茂雄が演じた「茂造じいさん」は、アドリブで共演者をいじり倒すことで知られ、そのやり取りは大げさでなく抱腹絶倒だった。
台本にはないアドリブが他の出演者のアドリブを引き出し、それがまた新たな笑いになる。新喜劇の演目は週ごとに変わるが、アドリブの応酬によって、初日と最終日でも全く別物になることも珍しくない。時には50分予定の公演が80分近くにまで延長されることもあるというから、その盛り上がりのほども分かるだろう。
3)個性の大渋滞! 強烈キャラクターと珠玉のギャグ
吉本新喜劇の魅力を語る上で欠かせないのが、座長をはじめとする100人以上の個性豊かな座員たちだ。「茂造じいさん」で絶大な人気を誇る辻本の「許してやったらどうや」。「すち子」というおばちゃんキャラクターで大ブレークしたすっちーと吉田裕の「乳首ドリル」。そして、初の女性座長・酒井藍の「私、人間ですねん」など、一度見たら忘れられない名物ギャグは数知れない。
さらに、脇を固めるベテラン勢も強烈なキャラクターの宝庫だ。未知やすえの突然のブチギレ芸や、島田珠代の予測不能な動きなど、座員たちの個性はそのままギャグになり、何年にもわたって観客に笑いを届け続けている。

■今一番人気は、BSよしもとだけの新作公演「BSよしもとpresents吉本新喜劇」
BSよしもとでは、過去の上演作を届ける「よしもと新喜劇」(毎週火曜夜10:00-11:00ほか)、1965年から1986年まで放送されていた「なんば花月」の吉本新喜劇を届ける「お笑い花月劇場」(毎週土曜昼11:00-12:00ほか)のほか、BSよしもとだけで見られる「BSよしもとpresents吉本新喜劇」(毎週木曜夜10:00-11:00ほか)の3つの新喜劇が放送されている。
「BSよしもとpresents吉本新喜劇」は間寛平GM×すっちー、酒井、アキ、吉田の4人の座長を中心に、BSよしもとが仕掛ける新作・吉本新喜劇。今、BSよしもとで最も視聴率の高い人気番組となっている。
時代ごとに変わる新喜劇とスター俳優、それでも変わらない定番の笑い。難しいことは考えずにただ笑いたい。そんな気分のときに、ふとチャンネルを合わせてみるといいかもしれない。
◆文=鈴木康道

