里美は夫・和樹に全てを打ち明け、奈美子さんとの縁を切る決意をする。再度訪れた奈美子さんに対し、里美は強く断るとともに、自身もひとり親家庭で育った過去を告白して…。
友人との関わりが苦痛になる
実家に避難して、私は全てを和樹に打ち明けた。
「もう奈美子さんと関わるの、無理かもしれない。怜人がいるのに、シングルマザーとその子どものお世話なんてできないよ」
夫の和樹は、私の話を黙って聞いていたけれど、話し終わると、きっぱりと言った。
「奈美子さんは里美の優しさに完全に付け込んでいるだけだよ。里美の善意を搾取している。縁を切った方がいいよ」
夫の言葉に、私はようやく踏ん切りがついた。奈美子さんがひとり親という状況を考えてあれこれ助けてきたけれど、もう疲れてしまった。自分の家族、そして何より生後間もない怜人を、理不尽な恐怖から守るのが最優先だ。
図々しい友人にきっぱりと断ることに
「もしまた来たら、今度はきっぱり断る。和樹くんにも、迷惑かけるかもしれないけど…」
「大丈夫。里美が一人で背負うことじゃない。もし何かあったらすぐに連絡して」
翌日、私は和樹と一緒に自宅へ戻った。和樹は出勤したが、もしものことがあればすぐに連絡するようにと言ってくれた。
そして、案の定、奈美子さんはその日の午後にやってきた。今回は健くんは一緒じゃない。きっと本格的に何かを要求するつもりなのだろう。
「里美、お米の件どうだった?少しならご主人に秘密でもバレないんじゃないの?」
私は覚悟を決めて、奈美子さんをソファに座らせた。もうごまかさない。
「奈美子さん。ごめんね。もう、あなたのお願いは聞けない」
私がはっきり断ると、彼女の顔つきが変わる。
「なんで?私はこんなに大変な状況なのにさ、里美は助けないってこと?」
私は静かに、しかし毅然とした声で答えた。
「大変なのはわかるけど、うちだって楽じゃないよ。不妊治療にだってたくさんお金を使ったし、怜人だってこれからお金がかかる。それに、奈美子さん。私は、そこまであなたのお願いを聞く義理もないと思ってる」
奈美子さんは、言葉を失ったように私を見つめている。私が初めて強く、しかも明確に「ノー」と言ったことに、驚きを隠せないようだった。

